2月18日、日本郵政は傘下の日本郵便がオーストラリアの物流大手を買収すると発表した。加えて、ゆうちょ銀行の資産運用方針を変更し、今までよりもリスクを取って収益力アップを目指す。背景には、今秋を目指す株式上場に付きまとう「成長戦略不在」の批判を払拭したい思惑がある。

 年賀はがきの配達という毎年恒例、年始早々の大仕事が落ち着いても、今年の日本郵便に一息つく暇はなかった。郵政グループとして過去最大となる買収を仕掛けようと候補先の企業へ接触。そのデューデリジェンス(資産査定)に追われていたからだ。

豪物流大手の買収劇の深層 <br />日本郵政が上場前の“化粧”6200億円という、郵政グループにおける過去最大の買収案件をまとめ、握手を交わす日本郵便の髙橋亨社長(左)
Photo:AAP Image/アフロ

 詳細を詰め、2月17日に取締役会で買収のゴーサインが出ると、すぐさま株主である日本政府への説明に奔走。そして、翌18日に発表会見とあいなった。

 その席で持ち株会社である日本郵政の西室泰三社長は、傘下子会社の日本郵便が約65億豪ドル(約6200億円)で、オーストラリアの物流大手トール・ホールディングスを買収すると発表。日本郵便の売上高は約2.8兆円で、トールとの単純合算で約3.6兆円となり、世界5位の物流企業になるという。西室社長は「グローバルに生きていく第一歩」と語った。

 また、金融子会社のゆうちょ銀行が持つ運用資産の構成を全面的に見直す方針も表明。2014年12月時点で205兆円ある運用資産のうち、半分以上の110兆円を安全資産の日本国債に振り向けてきたが、今後は収益力アップを狙ってリスク資産の割合を増やす。

 この動きの背景には、郵政グループが今秋を目指す株式上場に対する危機意識がある。その上場計画では、日本郵政と金融子会社のゆうちょ銀、かんぽ生命保険による3社同時の親子上場が予定されている。ただ、投資家に株を買ってもらうために必要な成長戦略がないという批判が当初からあった。