昨年12月に起きた大韓航空のナッツリターン事件で批判を浴びたのが、騒動の発端となった横暴な副社長の出自だった。韓信グループ会長の令嬢である彼女は、まさに「コネ入社」「コネ昇進」の象徴。日本でも、企業でのさばるコネ社員の是非に改めて注目が集まった。では、世間のビジネスパーソンたちは、どのようなコネ社員に悩まされているのだろうか。その実態や呆れたエピソードを収集した。(取材・文/有井太郎、協力/プレスラボ) 

会社ぐるみでワガママ娘をかばう
ナッツリターン事件の「コネ論争」

コネ社員の暴挙にうんざり!<br />わが社の「ナッツリターン」事件簿(上)あなたの会社にも、信じられない言動で周囲を困らせる「コネ社員」はいないだろうか Photo:NOBU-Fotolia.com

 どの国にも、コネで幅をきかせる人がいるものだ――。

 昨年12月初旬、寒さが厳しくなった頃にワイドショーを過熱させたのが、「ナッツリターン事件」だ。アメリカから韓国へと向かう大韓航空86便に乗り合わせていたチョ・ヒョナ氏(大韓航空副社長)は、提供されたマカデミアナッツが袋に入ったままだったことに激怒。「機内サービスがなっていない」と、その場でCAを叱責した。だが、彼女の怒りはそれで収まらず、その後もスタッフと大揉め。最終的には、滑走路に向かっていた旅客機を搭乗ゲートまで引き返させたのだった。

 いくら副社長とはいえ、多数の乗客がいる旅客機を自分の指示で引き返させるのは“越権行為”。この事件以後、「航空保安法違反」の疑いでチョ氏が逮捕されたり、怒鳴られた女性従業員が米国でチョ・ヒョナ氏を提訴したりと、騒動の余波はいまだ収まらない。

 さらに、そこでさらなる問題が勃発する。事件後、大韓航空では、彼女の行動を隠蔽するよう社員に働きかけていたことが判明したのだ。スタッフたちの虚偽の証言に始まり、チーフパーサーが記入する事件の確認書なども、役員から何度も書き直しを命じられたという。

 大韓航空がチョ氏を守るためにそこまでした理由は、極めて単純だ。彼女は、大韓航空を含む韓信グループ代表取締役会長の令嬢だったのである。