KDDI社長兼会長 小野寺 正
撮影:宇佐見利明

 来年は、1985年に日本で「通信の自由化」が始まってから25周年に当たる。

 そういう時期にあって、私たちは、過去4半世紀を振り返る必要があるのではないだろうか。旧電電公社の独占だった世界に競争原理を持ち込んだことにより、何がよくて、何が悪かったのか、結果を検証すべきであろう。

 その節目の年である2010年には、「NTT再々編」(組織問題)の議論が再開されることになっている。この2010年問題の行く末を、私は危惧している。

 NTTは、今でも圧倒的な力を保持する主導的企業であり続けている。その一方で、80年代に規制緩和で通信業界に新規参入した事業者は、集約が進んだことで、数えるほどしか残っていない。

 加えて、NTTは、業界のトップ企業でありながら、通信のあるべき姿や、そのなかで自らが果たすべき役割について、明確に言及できていない。たとえば、近い将来、既存の電話回線(銅線)を止めて、すべて光ファイバーに置き換えることを考えているのならば、その時期を表明すべきである。

 数年前から、KDDIは「(通信の将来を考えれば)両者が電話網のIP化を推進することは、最終的に価格が下がるなど国民経済的なメリットがある」とNTTに働きかけてきたが、彼らは動かなかった。「スケジュールが決まっていないので、自ら問題を解決する必然性はない」となるのだろう。

 今のNTTグループは、現在の組織体制を守ることに汲々としているようにしか見えない。(談)

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)