麻生政権が提案している2兆円の定額給付金の評判がよろしくない。調査では国民の約8割がこの政策に不賛成だという。最近では財政審議会の西室泰三会長が、その撤回を求める意見を述べた。

 確かに、いくつか問題があった。私見では、景気刺激策として金額が小さ過ぎるし、年齢による金額の差に納得性が乏しい。給付に際してそうとうの費用がかかると見込まれ、非効率的だ。加えて、首相の発言はたびたびブレたし、なにより政策発動のスピードが遅い。

 しかし、定額給付金という政策自体が本当に悪いのか。

 米国の金融危機に端を発した現在の景気悪化に対して、金融を緩和することと、金融緩和を有効に働かせるためにも、なんらかの財政的な措置を組み合わせた経済政策を取るべきことについては、おおかたの意見は一致していよう。

 一つの懸念は財政赤字だが、現在、物価はGDPデフレーターで見る限り、依然としてデフレを脱却し切っていない。デフレは日本政府の債務に対する過剰な信認でもある。不況によって資金需要が弱いので長期金利も低い(実質金利では必ずしも低いとは言い切れないが)。目下、財政赤字の問題としての順位は低い。

 需要追加の方法が問題だが、「給付金」は減税の一種だし、「定額」であることは低所得層への所得再分配になる。財政赤字が必要なのだとすると、減税(それも経済的弱者に厚い)は、弊害が少ない。使途は個々人が自由に考えられる。

 一方、政府がなんらかの事業に支出を行なう、いわゆる「財政出動」には、支出の必要性・効率性と、支出に伴って政府の活動が肥大化する弊害がある。フェアでかつ効率的なおカネの使い方を考えることは、それほど簡単ではない。