オフィスの移転やリノベーションの目的は様々だが、多くの企業にとって「社員のモチベーション向上」は重要な狙いの一つだろう。しかし、実際にオフィスが変わることで社員の「働き」にはどんな影響が生じるのだろうか。オフィス戦略によって社員の「働きやすさ」をサポートし、それをさらに社員の「働きがい」につなげている老舗企業の実例を見てみよう。

東京・千代田区にあるキョーリン製薬ホールディングスの新オフィス

 キョーリン製薬ホールディングス(以下、キョーリン)は、創業90年の歴史ある新薬メーカー・杏林製薬を中心とした総合医薬品グループだ。50年以上にわたって東京・御茶ノ水エリアに本社を構え、その周辺に関連子会社を集めてきた同グループは、2013年に御茶ノ水駅前に建造された大型複合ビル「御茶ノ水ソラシティ」内に本社機能を移転させた。1フロアあたり900坪を超えるというメガフロアの特性を活かし、これまで複数のビルや8階に分散していた社員500人弱のほぼ全員を、2フロアを内部階段でつないだ1つの空間に集約させた。

 今回のオフィス移転は、キョーリンに近く訪れる創業100周年を見据えた長期プロジェクトの一環であり、その根幹には社員にとって「働きがいNo.1企業を目指す」という、グループ全体としての確固とした目標がある。

「企業が持続的に成長していくための条件として、"社員が熱意をもって働ける組織づくり"が必要不可欠です。社員の『働く意欲』を高めていくためには、社員が『働きがい』を感じることのできる制度を作るとともに、社員が『働きやすい』と思える環境を作ることが必要となる。この3つのキーワードがうまく循環するしくみを、会社として提供していくことに取り組んでいます」

キョーリン製薬ホールディングス
松本臣春 常務取締役
グループ総務人事統轄部長

 そう語るのは、キョーリンの人材マネジメントを掌握している人物であり、グループ全体の総務人事や法務部門を統轄している松本臣春常務取締役だ。

「まず、『働きがい』とは具体的に何かと言うと、それは社員一人ひとりによって千差万別です。仕事を通じて成長した実感が大事という人もいるし、社内での適正な評価という人もいれば、報酬を重視する人もいる。会社としては、社員一人ひとりのニーズをしっかり汲み取って、応えていく必要がある。それとあいまって、社員の『働く意欲』に影響を及ぼしているのが、『働きやすさ』を改善するマネジメントです」(松本常務)

 この「働きやすさ」を実現するために、新オフィスが大きな役割を果たしている。具体的にオフィスの中身を見てみよう。

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