一部のコモディティでリスクマネー回帰の動きが強まっている。金価格は9月8日に2月以来の1000ドル(1トロイオンス当たり)を突破。原油も1バレル70ドルを回復した。だがその陰で、市場関係者は米当局が進める先物取引規制強化の行方を注視している。

 昨年まで規制強化に消極的だったCFTC(米商品先物取引委員会)は、姿勢を一転。8月には穀物関連ETFを運用していた業者2社に対し、持ち高制限を課した。さらに9月からは、穀物取引に関する大口投機家の手口報告で、区分をより細かくするという措置も講じている。

 背景には、オバマ政権が金融デリバティブ規制強化に強い姿勢を示すなか、CFTCが「自らの存在意義をアピールする必要に迫られた」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)ことがある。「ワシントンのCFTC事務所は陣容を急拡大させており、今回の“本気度”は高い」(ブルッキングス研究所の安部直樹氏)。

 もっとも、規制強化の具体的な内容や時期についてはいまだ不透明で、市場は“様子見”を決め込んでいる。1つのポイントとなりそうなのが、9月末に議会へ提出されるCFTCとSEC(米証券取引委員会)の報告だ。両者は規制の“縄張り”をめぐり争っているが、「合意できなければ、大統領のトップダウンで決められるのでは」(安部氏)との観測もある。

 いずれにせよ、規制強化の方向自体は確かだ。最低限、資金の流れの透明性を高める措置が取られることは間違いない。従来あった種々の“抜け道”は使いにくくなる。すでに「“本丸”と目される原油市場では、大口投機家の買い越し数が伸び悩むなどの動き」(平山主任研究員)もある。

 投機家たちの予期に沿った内容となる限り、相場への影響は限定的というのがおおかたの見方だ。ただし、年金基金など長期資金のインデックス投資家は依然ポジションを積み上げ続けており、ここに規制が及んだ場合には波乱要因となろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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