結論は出ているのだが、分散投資か、集中投資か、という選択は投資家にとって永遠のテーマだ。

 一般論として、分散投資のほうがリスクを抑えられる(そして平均的な収益率は下がるわけではない)から効率がよいということは、数学的にも、経験則的にも明らかなので、「結論は出ている」。

 しかし、多くの投資家は、一般論として分散投資が有利だと聞いても、自分は「一般」ではなく「特別」でありたいと思っている。自分の能力を信じる者も、自分の運を信じる者も、自分のアドバイザーの優秀性を信じる者も、能力以上の判断を下しているという意味で自信過剰であり、これは、「オーバー・コンフィデンス」という用語で行動ファイナンスのよくある研究テーマになっている。

 もっとも、オーバー・コンフィデンスがなければ、人は投資をしようという気分になりにくいだろう。また、自信は人間が生きる元気の源だ。オーバー・コンフィデンスのすべてが悪いわけではない。

 だが、現実の投資家の行動は、ついつい集中投資に傾く。つまり、セオリーからはずれがちなのだ。

 加えて、サブプライム問題で内外の株式市場が不調な現在のような状況では、投資家の運用も上手くいっていないことが多いが、その場合に、いっそう集中投資の傾向が強化される公算が大きい。

 この傾向も、行動ファイナンス的に説明がつく。たとえば、投資元本の額のように、投資家が意識している「参照点」を手持ちの株式の評価額が下回った場合、投資家はリスクを避けるのではなく、むしろリスクを好むようになるという傾向が報告されている。これはノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらが考案した「プロスペクト理論」と呼ばれる体系に組み込まれている。