来年4月に経営統合を予定している日本興亜損害保険と損保ジャパンが10月30日に統合計画を発表した。両社は12月22日に臨時株主総会を開き、経営統合の承認を得ることになる。

 ところが、日本興亜の社内では、統合計画に影響しかねない社内文書の流出や内部告発の動きが出始めている。

 日本興亜は10月23日、保険金の支払いを先送りしたとして、金融庁から業務改善命令を受けた。支払い遅れの原因について同社は、経営による意図的な先送りを否定。「担当者の放置を組織的に発見したり、会社が警告を発する仕組みができていなかった」と記者会見で説明した。

 この同社の対応に対して、「社内体制や現場への責任転嫁だ」と、一部の社員からは不満が噴出しているという。

 会見の数日後、日本興亜の社内文書が一部メディアに流出。同社専務が今年2月下旬、「年度末の約束数値必達の件」と題して、年度内の保険金支払額を減らす目標数値を達成するよう、社員に通達していたことが発覚した。

 しかも、経営幹部の関与をほのめかす文書はそれだけではない。

 行政処分の翌日、日本興亜社員と見られる人物から同社宛に1通の文書が送られていることが本誌取材により判明した。

 この文書によれば、「今年1~3月にかけて、A損害サービス部長(文書では実名)は“小額でも支店の(保険金)支払額をオーバーする場合は翌月に支払いをする”よう指示している」と記されており、「粉飾決算として証券取引等監視委員会に告発する」としている。

 一方、日本興亜は文書の存在は認めたものの、「調査は行なったが、先送りの事実はなかった」と主張している。

 こうした内部文書流出や内部告発とも見られる動きが相次いでいる背景には経営統合への不安もあるようだ。

 両社が発表した統合計画によれば、修正連結ROE(株主資本利益率)は今年度1.6%(見込み)が統合5年後には7%に上昇する。だが、「経営統合でどのように企業価値を上げるのか、納得のいく具体策が見えない」(日本興亜社員)という不安も漏れ伝わってくる。

 経営陣が経営統合による成長シナリオを示せなければ、今後、日本興亜社内の不満はさらに高まる恐れもある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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