政府系金融機関は本当に必要か官の介入・肥大化は正当化できるのか。写真は政投銀の所管省庁である財務省
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 政府は2月20日、日本政策投資銀行(政投銀)と商工組合中央金庫(商工中金)の根拠法の改正案を通常国会に提出した。2022年度までを目途としていた政投銀と商工中金の完全民営化の時期を先延ばしして、当面の間、政府が株式の一部を保有し続ける内容だ。また、官が主導するファンドも相変わらず跋扈(ばっこ)し続けている。

 しかし、本来は民間でできることにまで官が介入し、市場規律を歪めるのは資本主義国家としての信認を失うものであり、金融立国の障害となるものだ。以下、どうしてこのような議論が出てきたのか、その背景を探ると共に、なぜそれが問題なのかについて考えてみたい。

政府による企業支配を続ける
まやかしだらけの法案内容

 去る1月8日の自民党政務調査会の部会にて、「成長と安心のために必要な資金供給に関する当面の対応」なるペーパーが配布された。もちろん、それまでに財務省や経済産業省など関係各省は政府・与党との間で十分な根回しをしていたに違いないのだが、そのペーパーの内容については与党内でさえ、相当数の議員から異論が出るものだった。

 その理由は、提案されている内容が、政投銀と商工中金の完全民営化の先送りであるばかりでなく、むしろ、それら政府系金融機関の業務拡大を目指すものだったからだ。

 政投銀と商工中金の完全民営化を延期し、彼らに業務の拡大を許容する理由として挙げられていたのは、(1)成長マネーの供給、(2)セーフティネットマネーの供給、の2点だ。

 いわく、「企業の潜在的な成長力を引き出すには、資本性資金を中心とする成長マネーが不可欠だが、現状、民間の担い手・市場が未成熟」「金融危機や大規模な自然災害は、実体経済に大きなダメージ。危機に対する備えなしには、企業は思い切った成長への投資ができない」。

 そのため、政投銀には、危機対応業務の実施を義務付け、また、2013年に立ち上げた「競争力強化ファンド」について法律上の「特定投資業務」とし、2020年度末までの間、政投銀に対する政府の出資を可能とする。政投銀は2025年度末までに特定投資業務によるすべての投資資産を処分し、同業務を終了するよう努める。現在、政府が政投銀の株式の100%を保有しているが、特定投資業務の的確な実施を確保するため、2025年度末までは政府に2分の1超の株式を保有する義務を課し、その後も当分の間、政府が3分の1超の株式を保有するよう義務付ける。商工中金は政府が株式の約46%を保有しているが、当分の間必要な株式を保有する(下線筆者)というのだ。