米国の“会員制倉庫型店舗”、コストコが日本で出店を加速中だ。

 1999年の日本進出以来、8年間で出店はわずか5店舗と、流通外資に似合わない慎重さだったが、昨年7月、3年ぶりとなる新店を川崎市で開設後、今年1月に札幌市、4月には埼玉県入間市で開業予定と一気に3店舗を新設。来年初夏には埼玉県三郷市の駅前再開発地に、スウェーデンの家具専門店、イケアなどとともに出店が決まっている。背景にあるのは、収益モデルの確立だ。

 年会費(個人4200円、法人3675円)を支払わないと入店できない。店内は商品が段ボール箱入りのまま積み上げてあり、まさに巨大物流倉庫そのもの。当初は輸入商材ばかりが目立ち、「高い会費を払ったけど、何を買えばいいのかわからない」と戸惑う消費者の声が聞かれた。

 だが、地道な努力で品揃えを変えた結果、商品の6割は国内調達に切り替わり、消費者になじみのブランドが並ぶようになった。

 なによりの武器は、安さ。「会費収入で利益を確保し、粗利益を削って他店より安く売る。このビジネスモデルで市場を席巻してきた」と米国在住の流通コンサルタント、R2リンク代表の鈴木敏仁氏は指摘する。

 日本でも同様の仕組みが威力を発揮し始めている。有名メーカーの調理焼きそば(200グラム)が5袋で708円、ブランド米(10キロ)が3280円など、価格で競合店を圧倒する。

 日本の1店舗当たりの年商は、北米と同水準の約130億円で、これは、日本の一般的な大型総合スーパーの約1.5倍。低価格を実現するため粗利益は低いが、販売店員が少なく、商品を荷姿のまま陳列するなどコストを徹底して抑えているため損益分岐点は低く、日本法人はすでに黒字化を達成している。

 8店舗目の入間店がフル稼働する来年度の売上高は1000億円を突破する見通しで、今後、店舗網を50店に拡大する強気の計画を打ち出している。仏カルフールは撤退、米ウォルマート・ストアーズは西友を子会社化したものの赤字続きと、流通外資は連戦連敗の状況だが、コストコが有力な勝ち組候補に浮上してきた。

(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 田原寛)