いい大学、いい会社に入らねば…<br />韓国の激烈競争社会が招く格差韓国の書店で平積みされているサムスングループの入社試験参考書
Photo by Izuru Kato

 天ざるそば6100円、長崎ちゃんぽん6500円、うな重8600円、特選海鮮丼1万3200円。

 韓国・ソウル中心部にある外資系五つ星ホテルの最上階に日本食レストランがあった。そのメニューをのぞくと、前述のような驚愕の価格が記されていた(元の表示はウォン、サービス料・税込み)。

 こんな価格設定で客は来るのだろうかと、ソウルの金融市場の知人に聞いてみた。彼もその値段にあきれていたが、「女性に見栄を張りたいやつが行くのではないか」との答えだった。

 最近、今年の韓国の実質成長率予想が下方修正された。国際通貨基金は3.3%へ、韓国銀行は3.1%へ引き下げた(1月時点の予想は、前者が3.7%、後者が3.4%)。多くのソウルのビジネスパーソンが、韓国の景気はあまり良くないと語る。

 しかし、減速しているとはいえ、先進国の標準と比べれば高い成長率なので、バブリーな人がまだ一部に残っているようなのだ。そのレストランはかなり極端なケースではあるが、今のソウルの物価水準は全般的に高いといえる。

 ただ、給料が良い財閥系大手企業の社員はさほど気にしないかもしれない。昨年の平均給与は、サムスン電子が1110万円、現代自動車は1060万円、売上高上位27社の平均は850万円だ(ちなみに2014年3月期のトヨタ自動車は790万円、パナソニックは690万円)。サムスンは福利厚生も手厚く、子供の学校(私立を含む)の授業料は大学卒業まで会社が全て払ってくれるといわれている。

 中国企業の追い上げもあり、韓国企業は先行きを楽観できなくなっている。しかし、危機が近いという状況ではない。大手企業は潤沢にキャッシュを保有している。十大財閥の上場企業96社の内部留保は、昨年504兆ウォン(55兆円)に達した(東洋経済日報)。