農業は日本の成長産業だと言われながら、新しく農業を始めてもなかなかうまくいかないのが現状だ。それは大企業の資本があっても、簡単に成功できるものではない。なぜほかの産業と違って、農業で成功するのは難しいのか――。経験のない人を儲かるプロ農家に育てている「野菜くらぶ」代表の澤浦彰治氏にその秘訣を聞いた。

労働時間を考えていたら
良質なものはできない!

 全国各地から講演に招かれるようになって、新規就農者の「独立支援プログラム」について多くの質問をいただきました。農業人を育て、農業経営者を育てていくことが今一番必要とされているのだと感じているところです。

 皆さんから「成功する人とうまくいかない人、失敗する人の違い」について、いろいろな形で質問を受け、そのつど私なりの考え方をお話ししてきました。ここではそのポイントの一部をご紹介していこうと思います。

 成功している農業者は既定の労働時間に縛られていません。作物中心、お客様中心で自分の時間を使うのです。しかし、うまくいかない人は、一般的な労働時間である午前8時~午後5時という時間に縛られて働いています。

 農業は労働基準法の適用外になっていますが、最近、農業の現場でも労基法遵守が求められることが多くなってきました。もちろん法人として働いている人たちの労働環境と福利厚生面や待遇を改善していくという観点から、労働時間についても見直していくことは必要だと思います。しかし反面で、農業は、自分のスキルを高める努力をせず労基法や就業時間に縛られて働く人が豊かになれる職業ではないのです。

 成功している農業者は、よい作物を栽培するのに必要とあれば、朝でも昼でも夜でも、どんな時間帯でも学び働きます。

 たとえばハウス栽培のホウレンソウでは冠水作業(水やり作業)をしますが、よいものを栽培しようとすると、冠水作業の最適な時間帯は夏と冬とでは違ってきます。