酒は飲まず、好物は餅に団子。名医の指導も受けた毛利元就※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 安芸(現在の広島県西部)という小さな国の領主から、一代で中国地方の覇者となった武将、毛利元就。勝率で考えると最も戦に負けない武将だったという説もある。周辺に強力な大名たちがひしめき合う中、着実に勢力を広げ、やがて中国地方をまとめた。

 長生きは家系とよくいわれるが、元就の場合、父親も兄も若くして亡くなっている。原因は酒の飲み過ぎ。それを間近で見ていた元就は酒を飲まず、禁酒を家訓とした。このことからも彼が健康に気を配っていたことがわかる。

 もっとも禁酒は家訓ではあるが、他人に強要するようなことはなかった。江戸時代の軍記物『吉田物語』には、もてなす時には酒好きには酒を、下戸には餅を振る舞い、人心を掌握したとある。

 餅や団子は元就の好物としても知られる。今ほど調理技術が進んでいなかった中世では餅は贅沢品だが、消化がよい割に腹持ちがいい。栄養学的には餅は少し食べるだけで高いエネルギーを摂取することができるのが特長。ご飯1杯を食べることが難しくても、餅ならするりと食べられる。喉に詰まるリスクには十分注意する必要があるが、食が細い人にも薦められる食べ物だ。