「地獄に仏」か「泥棒に追い銭」か。パチンコ店における「銀行ATM」設置がひそかに進んでいる。

 かつてパチンコ店近隣のサラ金ATM設置が社会問題化したが、今では都銀、地銀から郵貯、農協まで、ほとんどの金融機関の預金が店内で引き出せるようになった。

 写真は、新宿・歌舞伎町の大手パチンコ店に設置されている銀行ATM。のめり込み防止のため、引き出し額は1日3万円が上限で、キャッシングは不可だというが、手持ち金を使い果たして“アツくなった”客が次々と預金を引き出しに来る。

 パチンコ店へのATM設置を進めているのはトラストネットワークス。東証1部上場のインターネットイニシアティブ(IIJ)の子会社で、経営陣にはIIJからの出向者、コンビニATMのセブン銀行を立ち上げたセブン&アイ・ホールディングス元幹部やパチンココンサルティング会社幹部らが名を連ねる。いわばコンビニATMのパチンコ店版だ。

 すでに、関東の第二地銀などと提携し、全国のパチンコ店に約130台のATMを設置ずみ。IIJはいずれはパチンコ店以外も含めて8000台を目指すという鼻息である。

 昨年11月には日本共産党の機関紙「赤旗」で「パチンコ店にATM」と報じられ、第二地銀は提携関係見直しを示唆、一部の大手パチンコホールはATM使用を停止した。だが、業界関係者によれば、「世間を刺激しないように、ほとぼりが冷めるのを待っているだけ」なのだという。

 このATM設置のビジネスモデルには、パチンコ業界、警察も一枚噛んでいるとの観測もある。

 まず、パチンコ店の業界団体である全日本遊技事業協同組合連合会がATM設置に協力している。さらにいえば、ATMは警察の実質的な許可(手続き上は届け出)なしでは設置できない。

 パチンコ店への銀行ATM設置は、天下り先確保を含む新たな警察利権の温床となる可能性もありそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

週刊ダイヤモンド