最近、多くのメディアで「4月から公的年金額が実質的に減額される!」との報道がされており、オヤジの皆さんも耳にした人が多いでしょう。でも、年金額は0.9%増額されるのに実質的に減額されるというのが、どのような意味なのか、今一つピンとこない人も多いと思います。そこで今回は、この実質減額とはどういうことなのか、見ていくことにしましょう。

公的年金が持つ二つの自動調整機能

 公的年金を受給する前の人で、実際に受給できる年金額やその変動を意識したことのある人はあまり多くないと思いますが、公的年金には年金額を毎年変動させる二つの調整機能があるのです。その一つが「物価スライド」と言う仕組みです。この仕組みによって、公的年金額は各年の物価上昇率と賃金上昇率に応じて変わります。詳細の仕組みは複雑なので割愛しますが、簡単に言うと「物価上昇率<賃金上昇率」となる場合には、既裁定者(すでに年金を受給している人)は物価上昇率、新規裁定者(新たに年金受給者になる人)は賃金上昇率に基づいて年金額が改定されます。逆に、「物価上昇率>賃金上昇率」の場合には、低い賃金上昇率に合わせて既裁定者も新規裁定者も年金額が改定されます(上昇率がマイナスの場合には特例あり)。今回は、物価上昇率が2.9%に対して賃金上昇率が2.3%と、「物価上昇率>賃金上昇率」となりましたので、低いほうの賃金上昇率に合わせて2.3%で調整されます。この機能は、インフレ局面において年金受給者の生活水準を守るためにも非常に重要な機能と言えます。