プラント大手の東洋エンジニアリングが迷走している。採算度外視の受注獲得があだとなり、前期決算では11期ぶりの最終赤字に転落。拡大路線に赤信号がともっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)

「年間5000億円の受注を目指してきた。だが、十分なキーパーソンを確保できなかった」──。

 5月14日、2015年3月期決算説明会の席で、中尾清・東洋エンジニアリング社長は苦渋の表情を浮かべた。中尾社長は、業績悪化の責任を取って辞任した石橋克基前社長に代わり、4月1日に登板したばかり。東洋エンジは、15年3月期だけで3度にわたる業績下方修正を実施、経営の迷走が続いている。

 迷走の元凶は、行き過ぎた拡大路線にある。近年、海外プロジェクトを薄利で受注してきた。現中期経営計画(12年4月~16年3月)の策定時に、「(年間受注額)50億ドルの会社を目指す」と、拡大路線を高らかに宣言。12年3月期に2800億円だった受注額を1.6倍にする方針を打ち出した。

 当時の経営陣の言葉通り、受注額目標の達成率は13年3月期93.7%、14年3月期98.7%と高水準を維持し、15年3月期に至っては114.7%と目標値を超えた。一見して、業績が順調に推移したかのようだ。

 しかし、実情は全く異なる。受注額目標の達成率が高まる一方で、営業利益目標のそれは反比例するように下がり、15年3月期には▲40.6%となった。最終的には赤字を生むという本末転倒の結果を招いてしまったのだ。

 かねて、社内でも「無理に受注を増やして、誰がプロジェクトを管理するのか」という悲鳴が上がっていたが、「欧米から仕事をもらうには、企業としての規模感が必須」(東洋エンジ幹部)として、経営陣は拡大路線を歩み続けた。

 こうした放漫な企業体質を象徴するプロジェクトがある。11年に500億円で受注した、インドネシアの国営肥料会社、カルティムの肥料プラント建設がそれだ。

 この案件では入札段階から、「二番札に1億ドルもの差をつけて、一番札を入れる」(業界関係者)という見積もりの甘さを露呈。その後も工事の不備が相次ぎ、合計100億円の損失を出した。