1月12日(日曜日)の毎日新聞朝刊に、気になる記事が載っていた。厚生労働省が企業年金の一つ「確定拠出年金」(日本版401k)について、企業だけに認めている掛け金の負担を2009年度中に従業員も払えるようにする(マッチング拠出)とともに、掛け金の上限額を引き上げることを決め、さらに政府が従業員の掛け金全額を所得控除することも盛り込み、開会中の通常国会に提出するというのだ。

  毎日新聞の見出しにもあるとおり、「株価対策も狙い」である点は明白だ。401kを増枠して、皆が株を買うようにすれば、いくらかは株価対策になると考えたのだろう。

 株価対策として個人に株を買わせるというのはあまり筋の良い話ではないが、確定拠出年金に関するこうした改善点の必要性は実は以前より指摘されていた。ただ、株価低迷でもなければ、具体的な法案とはならなかっただろう。

 特に枠の拡大は、それだけ課税ベースが縮小することを意味し、財務省が渋い顔をするのは目に見えていた。だからこそ筆者も株式相場が相当落ち込んだ時に動きがあるのではと思っていたが、はたしてその通りになった。品のない展開とはいえ、結果オーライで受け止めるべきではないか(むろん、通常国会はこの法案のために開かれているわけではなく、今後も相当荒い展開が予想されているので、場合によっては、改正関連法案が通らずに、空振りに終わってしまう可能性はある)。

 ちなみに、確定拠出年金は、2001年10月に公的年金を補完する新企業年金としてスタートして以来しばらくは、当時の確定給付型の企業年金の運用不振と不景気もあって、導入が相次いだ(確定給付年金を廃止して導入した企業のほか、そもそも余裕があって確定給付年金に追加する形で導入した企業もある)が、いまだブームと呼べるほどにはなっていない。

 ただ、アメリカでも「401k」が広がるまでにはかなりの時間がかかったようだ。日本でも少しずつ使い勝手を良くして、枠も大きくしていけば、将来、導入に拍車がかかる可能性はある。今回の改革案に従えば、企業型確定拠出年金の掛け金の上限額は現行の4万6000円から5万1000円に引き上げられる(年間61万2000円が所得控除されて積み立てることができる)ということだから、結構な大きさに育ってきた。