トヨタ自動車が、複数販売チャネルを集めた新たな大型合同店舗の計画を進めていることが明らかになった。

 問題は、その場所である。計画が進められているのは、北海道釧路市と、東京都葛飾区金町の二か所だというのだ。

「最初に聞いたとき、何で釧路と金町?と思った。いわゆる過疎地と下町ですから」と、あるトヨタ関係者も率直に言う。

 無理もない。これまでもトヨタは、国内市場の活性化対策として、複数の販売チャネルをまとめた大型店舗を次々とオープンしてきた。ただし、「トレッサ横浜」や「埼玉オートモール」など、従来の大型店舗は、新興住宅地などに隣接する商業地域で「それなりの販売台数の拡大が望める地域」(業界筋)に限られていた。北海道の釧路や東京の金町というのは、明らかにこれまでとは立地条件が異なる。

 ところが、驚くことに「今後、釧路や金町のような店舗は増えるだろう」と、別のトヨタ関係者は証言する。

 なぜトヨタは、"過疎と下町"という、一見売れそうにない場所に、そのような大型合同店舗を開設するのか。

 じつは、その理由は「過剰店舗と不採算店舗の整理」にあり、ほかでもない「新社長に内定した創業家出身の豊田章男氏の方針によるものだ」(あるトヨタ系ディーラー幹部)という。つまり、成績の悪い店舗を統廃合することで、効率化と集客の向上を狙うのが目的なのだ。

 昨年12月下旬に、日本自動車工業会は、2009年の国内新車販売台数(軽自動車を含む)が31年ぶりに500万台を割り込む見通しを発表、国内市場はより一層厳しい状況にある。

 それを踏まえ、章男氏は社長昇格の発表があった翌日の1月21日、名古屋市で開かれた全国販売店代表者会議の席上、「国内市場が縮小するなか、今年は除軽(軽自動車を除く)の国内販売市場が300万台を切る可能性が高い。今のままで全体の体制を維持するのは難しい」と発言、販売店の削減に加え、将来的なディーラー再編までほのめかしたという。

 現在、トヨタの販売チャネルは、メインの販売車種ごとに異なり、ネッツ店、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店のトヨタブランド4系列に、高級ブランドのレクサス店と計5系列。トヨタブランド4系列だけで、全国に5000店以上もある。

 「最大の販売チャネルであるカローラ店でも約9割は赤字だろう。トヨタ系販売店1店舗あたりの販売効率もピーク時の1990年前後に比べ、3割は悪化している」(トヨタ系ディーラー社長)。

 店舗の効率化と言っても、単純に店舗を減らすだけではジリ貧になる。その苦肉の策が複数販売チャネルを一堂に集めた大型合同店舗の展開というわけだ。さらには「九州や関西などの一部地域では、ダイハツ製の軽自動車をトヨタ系列店で販売することも決定している」(関係者)という。

 国内最強の販売力を誇るトヨタといえども、これだけの苦悩を抱えている。まさに、現在の国内自動車市場の低迷ぶりを象徴している、ともいえよう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)