業績の低迷に苦しむ日本の中小証券会社の注目する証券会社が米国にある。セントルイスに本店を構えるエドワード(ED)ジョーンズだ。「100年に1度」といわれる不況のなかでも、同社は黒字を維持。営業担当者一人当たり営業収入に至っては、2008年はなんと前年比約14%も伸ばしている。

 このEDジョーンズ、普通の証券会社とはひと味違う。あえて他の証券会社が進出しない郊外に進出し、営業担当者がたった一人しかいない「一人店舗」で運営している。店舗数は一万店と全米最大を誇る。

 まるで「街医者のように気軽に相談に応じる」(沼田優子・野村資本市場研究所副主任研究員)徹底した地域密着型の営業を貫いて、好評を博しているのだ。

 株は大型株のみ、投資信託も独立系運用会社のオープン型など、顧客の理解を得られやすく、リスクの低い商品だけを扱い、長期運用が基本。顧客の8割が口座残高500万円以下で、決して裕福とはいえない人が大半だ。

 にもかかわらず、増収増益を続けている秘密は、徹底した低コスト体質にある。

 一人店舗はもちろんのこと、商品を絞り込むことで、営業担当者の教育コストやコンプライアンス管理コストは低減される。

 また運用も長期だから、顧客一人にかかるコストもおのずと低くなる。その結果、営業担当者一人当たりの口座数は約700件、預かり資産残高も、他社に引けを取らない水準を実現しているのだ。

 ところ変わって日本の中小証券会社は、金融危機の影響もさることながら、慢性的な高コスト体質による業績不振に頭を悩ませている。「不況時の今こそ、見ならうべき」と、中小証券役員は羨望のまなざしを向ける。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)