ブッシュ米大統領に、靴を投げつけるという「ゲーム」が世界中で流行っているという。「AFP・時事」の配信記事によれば、次のようなものだ。

 〈このゲームは英国のアレックス・チュー氏が立ち上げ、米軍のフセイン・イラク大統領打倒の「Shock and Awe(衝撃と畏怖)」作戦をもじって「Sock and Awe(靴下と畏怖)」と名付けた。演壇の後ろで30秒間、頭を出したり入れたりして身をかわし続けるブッシュ大統領の画像に向けて靴を投げつけるもので、チュー氏が16日語ったところによると、既に140万回のアクセスがあった〉
http://www.sockandawe.com/

 早速、筆者もトライしてみた。結果は12回。イラク人記者のように、腕や肋骨を折られたり、逮捕されたりすることもなく、ブッシュ米大統領の顔面に靴を命中させることができた。どうやらゲームの中のブッシュ大統領は、実物の大統領よりもずっと反射神経が鈍そうだ。

 靴を投げたイラク人記者は、エジプトのテレビ「アル・バクダディア」と契約していたムンタデル・アル・ザイディ氏だ。この事件後、ザイディ記者に対して、アラブ連盟各国で釈放を求めるデモなどが発生している。サウジアラビアでは、ブッシュ大統領に投げつけられた「靴」に10億円の懸賞金がかかり、リビアでは、カダフィ大統領の娘が、記者への「名誉勲章」の授与を発表した。

 ただし、記者会見中にジャーナリストが靴を投げるという行為自体は許されるべきではなく言語道断の行いだ。取材会見に応じた人物が、いかなる「極悪非道」な者であろうと、了解して会見に臨んでいる以上、物理的な危害を加えるということは絶対にあってはならないことだ。

 そうした意味で、靴を投げたザイディ記者はジャーナリストとして失格であり、二度と取材活動を行わせるべきではないという意見に筆者も賛同する。

 とはいえ、現実問題として、彼、ザイディ記者の政治目的は十分に達成されたとみていいだろう。なぜなら、靴を米大統領に投げつけたという行為によって、イラクは決して米国を歓迎していないという印象を世界に植え付けることに成功したからだ。