“派遣切り”をはじめとする非正規社員に対するリストラが社会問題化するなか、年明けから急速に「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っている。

 1月6日に開かれた経済3団体トップによる共同会見では、経団連の御手洗会長が「ワークシェアリングも選択肢の1つである」と発言。それを受けてか14日、連合の高木会長が「現状ではあまり有効な手段とは思えず、ルール化は困難」と反論している。さらに、大阪府の橋本知事は、職員の残業時間を短縮し、400人を臨時採用する意向を表明。大阪府のほか、一部の地方自治体でも臨時職員の採用を計画しているところもあるという。

「ワークシェアリング」
の定義とは?

 このようににわかに注目を集めている「ワークシェアリング」だが、これを考えるにあたっては、どこからどこまでがワークシェアリングなのかをまず考えなければならない。そこで、現在、日本で定義されている「ワークシェアリング」は、大きくいうと下記の2つである。

1)多様就業型ワークシェアリング(雇用創出型ワークシェアリング)
2)緊急対応型ワークシェアリング(雇用維持型ワークシェアリング)

 1)は、多様な業務の短時間労働を組み合わせることで雇用機会を増やす、というもの。オランダをはじめヨーロッパなどで普及している制度がこれにあたる。近年いわれている“ワークライフバランス”を実現するためのシステムとして、ヨーロッパでは一般的になってきている。

 2)は、不況などで企業業績が悪化したときに、1人あたりの労働時間を短縮する(その分、賃金を切り下げる場合もある)ことで全体の雇用を維持する、というもの。最近、自動車メーカーなどの製造業を中心に行なわれている、工場の操業停止と一部賃金カットなどのケースがこれにあたるとされている。

7年前に行なわれた
“名ばかり”の3者合意

 しかし、「ワークシェアリング」が日本で話題になったのは、これが初めてではない。いまからさかのぼること7年前の2002年、一度議論されていたのである。2002年といえば、ちょうどITバブルがはじけ、不況下にあった時期。そこで、雇用不安を払拭するためだけでなく、経済・産業構造の変化、ライフスタイルの多様化、少子高齢化といったことも背景にあり、「ワークシェアリング」という選択肢が浮上したのである。

 そして2002年3月、当時の坂口厚生労働大臣、日本経団連の奥田会長、連合の笹森会長の3者による「ワークシェアリングに関する政労使合意について」という合意文書が出されている。この文書では、

 「多様就業型のワークシェアリングの環境整備に取り組むことが適当。また、現下の厳しい雇用情勢に対応した当面の措置として、緊急避難型のワークシェアリングに緊急に取り組むことも選択肢の1つである」

としながらも、

 「ワークシェアリングの実施は、個々の企業の労使の自主的な議論と合意により行なわれるべき」

と明記されている。これにより、ワークシェアリングの必要性を認めながらも、具体的な社会的条件整備は行なわれることはなかった。むしろその後、具体的な政策として進んだのは、製造業への派遣解禁をはじめとする派遣職種の拡大。つまり、「規制緩和」のほうである。