今回ご紹介する『まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするか』を読めば、そもそも投資によるパフォーマンス値上がり益というものは運なのだ、という境地に立てること請け合いです。金融環境が不安定な今こそ、「リスク」とはどのようなものか知っておくといいかもしれません。

あの『ブラック・スワン』著者の
考えが凝縮された書

株価乱高下の今こそ読んでおきたい!<br />デリバティブのプロによる痛快な市場のエッセイナシーム・ニコラス・タレブ著、望月衛訳『まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするか』2008年2月刊。裏の帯にはノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーの推薦文が書かれています。

 8月24日、日経平均株価は895円の全面安となりました。中国景気の減速懸念に端を発した株安は、円安などリスクオフの動きを伴って拡大。ニュース欄には「日経平均一時900円超安」「世界同時株安の連鎖」「アジア市場でパニック売り」といった文字が躍りました。

 荒々しい値動きは、個人投資家、機関投資家、トレーダーたちの間でさまざまな悲喜劇を引き起こしたに違いありません。こうした市場の動揺を目の当たりにした時、手に取りたくなる本があります。ナシーム・ニコラス・タレブ著の『まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするか』です。

 デリバティブ・トレーダー、クォンツ兼大学教授としても活躍するタレブの主著といえば、リーマンショックの前にその後の金融危機を予言するがごとく出版された『ブラック・スワン――不確実性とリスクの本質』(上下巻)が真っ先に上がるでしょう。

 本書『まぐれ』は『ブラック・スワン』と通底するタレブの主張――物事は私たちが思っているよりもたまたまであり、確実なのはわからないと認めることである――がよりコンパクトに、要領よく、皮肉たっぷりに展開されています。タレブの世界を味わうには、まずはこの『まぐれ』のほうから入ることをお勧めします。