ドルは基軸通貨の地位からいつ滑り落ちるのか? この設問は金融市場でしばしば話題になる。しかし、今のところ、ドルの国際的地位は意外に揺らいでいない。

 ニューヨーク連銀のスタッフが最近発表した論文(「Is the international role of the dollar changing?」)を参考に、ポイントを記してみよう。

 米国外で安全資産としてドル紙幣を保有している人びとがいる。昨年3月末時点では、5800億ドルものドル札が海外に存在していた。特にロシアや中南米で多い。全ドル紙幣発行残高に占める海外流通分は65%である。その比率はこの20年間だいたい横ばいだ。

 一時期は安全資産としてのユーロ紙幣の人気が高くなり、ドル紙幣への海外からの追加需要は頭打ちになっていた。しかし、トレンドとして減少するまでには至っていない。100ドル札は、小額紙幣よりもかさばらないため資産退蔵手段として使われやすいが、その海外保有比率はなんと75%だ。

 ドルへのペッキング(釘付け)など、自国通貨をドルにリンクさせている国の比率は、1995年は47%だったが、2007年は50%である(08年のラインハート、ロゴフ論文)。現時点でもほとんど変わっていないだろう。ドルとのリンクをはずしたがらない発展途上国は依然として多い。