「仕事がなくなったら、俺も無縁死予備軍?」<br> 書き込みがツイッターに殺到。若者たちが『無縁社会』に反応したワケ誰も訪れることがなく、ひっそりと無縁化した墓。日本中でこのような墓が増えている。

 1月末に放送したNHKスペシャル「無縁社会」。放送と同時に、インターネット上に衝撃が広がった。30代、40代という働き盛りの若い世代が「無縁死は他人事ではない」「自分も将来、無縁死する」といった心の叫びをネット上に書き込んだのだ。その書き込みは、数えられるだけで、3万件近くにものぼった。この反響の裏側に何があるのか、という疑問を抱いた私たち取材スタッフは、追跡取材を始めた。

 インターネット上の反響で、特徴的だったのは「ツイッター」というサイトに、放送中に書き込まれたものが目立って多かったことだった。ツイッターは、携帯電話やパソコンを通じて、不特定多数の人に同時にメッセージを発信し、また読んだ人から返信を受け取ることができる。そのため、ネット上で顔も知らない同士が“つながっている”感覚を味わうことができるため、去年から今年にかけて急速に普及したサイトだ。無縁社会も、この「ツイッター」を通じて、若い世代同士が共感の輪を広げていっていた。

 「俺も仕事がなくなったら、無縁死だなぁ…」。番組を見ながらツイッターに書き込んでいた34歳の男性。「ツイッターは、“心の安定剤”になっている」と話してくれた。自分も将来、無縁死するかもしれないと、この男性のようにツイッターに書き込んだ30代、40代の人たちの中から、私たちはその書き込みの裏に何があるのか、さらに追跡取材を続けていった。

ツイッターに垣間見える
ロスジェネ世代のホンネ

 そのひとり、38歳独身女性の書き込みはこうだった。

 「無縁死、ロスジェネ世代が敏感になっているような気がする」
 「35歳になると限界が見えてきて結婚市場でも価値が低下する時代――だから無縁死について考えるんだと思う」

 女性は、出版社から仕事を請け負い、雑誌や本に記事を書いている。仕事は1回ごとの契約で、収入は不安定だ。独りきりの仕事場で、丸子さんは頻繁に何気ない「つぶやき」をツイッターに書き込んでいた。

 「とりあえず、急ぎの仕事が終わった。ツイッター見ながら、昼食なう」
 「そろそろ仕事の集中力が切れております。今日こそは早く帰りたい」

 仕事場での女性は、都会で颯爽と働くキャリアウーマンという印象で、内面に孤独感を抱えているようには見えない。しかし、本当の自分の姿をツイッターに書き込んでいた。

「就職氷河期で苦労して非正規雇用」
「努力して働いたけど、結局、不況と自己責任」

 就職氷河期で正社員として就職できず、契約社員として会社を転々としてきた女性。終身雇用が崩れ、働き方の変容する一方、競争社会では当たり前に求められる「自己責任」。「自己責任」という言葉に縛られ、厳しい生活でも他人に頼らずに生きてきた結果、40歳を目前に「無縁死は選択肢のひとつ。そう覚悟している」と語っていた。

 「親戚付き合いもほとんどないし、深い付き合いの友人もいないから、結婚でもしない限り、無縁死する可能性は高いな」

 これは、 コンピューター関連会社の社員、35歳の男性のつぶやきだった。