『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、ウォール街からシリコンバレーまで全米企業への徹底取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第9回は、ビッグデータ活用と製品開発がテーマだ。

製品開発もビッグデータが決める時代が来る?

製品開発をどこまでデータに頼るか

 データはあらゆるものに対して答えをくれるわけではない。
 本物のテクノロジーのエバンジェリスト(伝道師)である、シンギュラリティ・ユニバーシティのヴィヴェック・ワダワでさえ、「新製品をデザインするときの人間的な側面を、テクノロジーが引き受けるとは考えていない」と認めている。

 データでは示すことのできない判断すべきこと、データでは手伝えない選択すべきことはあまりに多い。行動、必要性、好みといったものを考慮する人間の能力は、一つのアルゴリズムに集約できるものではないのだ。
 それでも、最初の製品を完成させ、発売することは必要だ。すると、データ収集とイテレーション(設計・試験・調査・改善という一連の工程を、短い間隔で繰り返し行う)のプロセスを始めることができる。

 ここで、ネスト・ラボのトニー・ファデルの考えから、重要なプロセスの特徴を言っておこう。新製品の最初のモデルは、九〇パーセント以上が独自の視点あるいはテイスト主導、五~一〇パーセントがデータ主導である。二番目のモデルは、およそ八〇パーセントがテイスト主導、二〇パーセントがデータ主導だ。三番目は七〇対三〇、そして四番目は六〇対四〇になる。モデルが新しくなるにつれ、データ主導の見方へ寄っていく。寄るスピードが製品によって違うのは言うまでもない。