「食品メーカーで世界トップ10入り」を掲げる味の素。今年6月に社長へ昇格したばかりの西井氏に目標達成の要諦について聞いた。

味の素社長 西井孝明 <br />M&Aによる“非連続”成長で世界トップ10を射程に入れるPhoto by Kazutoshi Sumitomo

──8月末に、フランスの甘味料子会社をわずか1ユーロで売却しました。その狙いは。

 2016年を最終年とする中期経営計画の下で、大胆な「選択と集中」を進めてきました。とりわけ、バルク事業(うま味調味料や飼料用アミノ酸などのコモディティ商品)の再建は焦眉の急でした。バルク商品は、価格の変動幅が大きく、価格が暴落すると莫大な損失につながります。そのため、採算が悪化していたアスパルテームの仏子会社の売却を決断しました。

 海外の成長ドライバーとして据える“ファイブスターズ”(インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム・ブラジルの5カ国)や、アミノ酸を軸にした先端バイオ事業で稼いだ利益を、バルク事業が食いつぶしている状態だったわけです。この構造問題を解決しないことには、「20年に食品メーカーで世界トップ10入り」という目標達成はあり得ません。

──かつて大損失を生んだ飼料用アミノ酸など、他のバルク事業はいかにして立て直すのですか。

 圧倒的な技術力で、他社との差別化を図ります。その象徴的な商品が、乳牛の飼料用のリジン「AjiPro-L」です。