今年10月1日に経営統合を予定している新生銀行とあおぞら銀行。統合交渉は暗礁に乗り上げ、合併破談は「時間の問題」との見方が強い。しかし、両行に加えて金融庁の思惑も複雑に交錯し、それも一筋縄ではいかないのが現状で、両行の統合は完全に迷走している。

「業務提携は引き続き行うという旨の一筆を差し出してほしい」

 今年3月、金融庁の幹部は新生銀行の八城政基会長兼社長に迫った。10月1日にも予定しているあおぞら銀行との合併に関して問いただした際のことだ。

 両行の合併が、金融庁主導のものだというのは衆目の認めるところ。経営が不安視される両行を合併させ、地方銀行との連携などを柱とする新たな銀行を誕生させる目論見だった。

 当然のことながら表向き、金融庁は関与を認めていない。しかし不良債権処理など、合併時に必要な資金を賄うために公的資金の注入を暗に約束するなど、力の入れようはかなりのものだった。

 だが、そうした思惑に狂いが生じる。本誌2月20日号で既報のとおり、主導権を握れないことをいやがった新生銀が突如、交渉に非協力的になったことで合併破談の可能性が高まったからだ。

 そうなれば金融庁の面目は丸つぶれ。そればかりか、自らの関与を公の席で明らかにされる可能性までも浮上したことで金融庁はあわてた。

 というのも、両行が統合交渉に当たって交わした合意書には、合併が実現しなかった場合、その原因を生じさせた側が70億円の違約金を支払わなければならないという内容が盛り込まれている。

 業績が振るわない両行にとって、決して小さくない額だけに、互いに責任を認めるとは考えにくい。となれば訴訟に発展し、法廷で舞台裏について言及されかねないという事情があったからだ。

 もちろん、自ら主導した合併だけに金融庁の首脳以下、幹部には、「最後まで成功させたいという思いは強い」(関係者)。交渉期限は1年で、6月末にはリミットがくる。そこでとりあえず業務提携だけは結ばせ、形だけでも交渉の継続を図ろうとしていたわけだ。

 さすがに両行ともこれに応じないわけにもいかず、債権回収(サービサー)事業とリース事業で提携することを検討している模様だ。