双日が総合商社としては初めて、独自の化粧品ブランドを立ち上げた。3月にはサントリーが基礎化粧品への本格進出を表明したばかり。異業種からの参戦が続く激戦市場で双日に商機はあるのか。

 双日は、100%子会社の双日コスメティックスを通じて、自然派化粧品の自社ブランド「ナチュレシア」を展開する。まずは化粧水、美容液、保湿クリームの3品目を通信販売。来年にはラインナップを10品目程度にまで拡大していく方針で、自社ブランド第2弾の立ち上げも決定しているという。

 表のとおり、国内の化粧品市場は大手飲料メーカーから製薬会社まで、副業として異業種から参入するケースが相次いでいる。

 同市場は、景気に左右されず安定した売り上げが見込める割に、参入障壁が低い。民間の調査会社によれば、異業種参入企業によるスキンケア製品の市場規模は、2010年には前年比10%増の約750億円に達するという。

 ただ、高い利益率が見込める“おいしい市場”として手を出してはみたものの、独自色を打ち出せないまま売り上げが低迷し、撤退に追い込まれる企業も多い。

 成功の秘訣は、本業で培った技術や素材を化粧品に応用して、消費者にそれをアピールできるかにかかっているといわれる。たとえば、富士フイルムはナノテク技術、サントリーは酒造に欠かせない酵母の発酵技術を転用するといった具合だ。そうした既存化粧品にない技術のインパクト、意外性で女性の心をとらえることが欠かせない。

 一方の双日は、アピールできる独自技術を持っているわけではない。だが、25年にわたって大手小売りの化粧品のOEM(発注元企業のブランドの製品製造)を請け負ってきた実績を持つ。黒子として化粧品の企画、開発、マーケティングを手がけながら、ノウハウを蓄積してきたのだ。

 双日は「これまで裏方としてさまざまな仕掛けをやってきた。今度は一歩踏み込んで自らリスクを取っていく」と意気軒高だ。

 双日としては自社ブランドを持つことで、これまで弱かった化学品部門の川下分野をテコ入れし、製品の原料から販売までのバリューチェーンを強化する狙いもある。

 ただ、国内市場はすでに頭打ちであり、資生堂などの専業メーカーは市場拡大が見込める中国をはじめとする海外に軸足をシフトしている。国際展開に不可欠な海外での事業ノウハウやネットワークは、総合商社の得意とするところ。双日が今後の主戦場と見据えるのが、海外市場であることは間違いない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

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