「普天間基地移設問題」だけでなく、「政治主導」の改革を目指していた国内政治についても、鳩山内閣が混乱していると言われる。

 しかし、これらの批判は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長の「政治とカネの問題」「優柔不断の首相と剛腕幹事長」に対する感情的な反発であり、その背後で確実に進行している政策過程の制度変化を正確に捉えたものではない。今回は感情論を排して、民主党政権による新しい政策過程を検証する。

「高速道路新料金」の過程で
「政治主導」は機能している

 前原国土交通相が発表した6月からの高速道路の新料金に、与党議員から不満が噴出している。結局、鳩山首相は現時点では見直さず、国会審議を踏まえて最終判断することにした。これが鳩山首相の調整力不足で、政策決定が政府と党に「二元化」したと批判されている。しかし、高速道路新料金策定の過程は、民主党政権が目指す「政治主導の政策立案過程」に沿ったものだ。

 高速道路新料金体系の取りまとめは、前原国交相と馬淵澄夫国交副大臣ら少人数で行われた。業界や個別の議員など利害関係者への根回しは行われず、国交省の「政策会議」にも事後報告された。この過程で大臣・副大臣らは官僚・族議員・業界の圧力を受けていない。トップダウンの「政治主導」が貫かれており、なにも問題はない。

 前原国交相の新料金案発表に対して、閣内や党内からさまざまな反発が起こった。しかし、多少の混乱はあったものの、最終的に鳩山首相が「現時点では見直さず、国会審議を踏まえ国交省で総合的に検討する」と決めた。

 これは、「国会の委員会審議で党議拘束をかけず、審議を尽くした後、採決直前に党議拘束をかける」「与党による法案修正もありえる」という民主党の国会改革に沿ったものだ(第38回)。鳩山首相の求心力や、党の影響力拡大を問題視することは事の本質ではない。自民党政権時代にはなかった、国会が本来持っている政府に対するチェック機能を次第に確保していることを積極的に評価すべきだ。