5月下旬の中米戦略・経済対話を前に、元切り上げに何らかの動きがありそうだ。ただ、中国政府も国内産業から大幅切り上げ回避の圧力を感じており、金融危機前の管理されたフロート制に戻るという可能性が最も高い。(北京在住ジャーナリスト 陳言)

「つばを吐いて、為替レートが決められるものだろうか」と、中国人民銀行貨幣政策委員会委員に就任したばかりの北京大学・周其仁教授は反問した。中米間の為替論争は、一種の神学論争になってしまったと周教授は見る。

 本当に元を引き上げてもらいたいなら、アメリカは、これに同調するほかの国と一緒に、元を購入すれば元は高くなるはずだ。一方、中国も元レートを死守しようと思えば、ドルをさらに買えばいいのに、それほど買っているわけではない。中米双方は口喧嘩するばかりで、行動はしない。

 貨幣戦争とも思わせるこの喧嘩は、もう結論を出す時期に来ている。5月24日と25日に中米戦略・経済対話(S&ED)が、北京で開催される。「これからの数週間は、いろんな協議があり、また結果も出るだろう」と、中国駐在のJon Huntsmanアメリカ大使は、中国のマスコミの取材に答える。「おそらく対話が開かれる前後、人民元はもう少し柔軟性を持つようになるのではないか」と、清華大学中米関係研究センターの孫哲部長は推察する。

 さらに11月にアメリカでは中間選挙があり、それに向けて政治的な演出もあるので、中国への圧力を強め、それに応えて中国も行動を見せるという形でやりとりする。それで人民元はその時にもう1回引き上げがあるのではないかと、北京の巷では噂が流れている。噂どおりなら、年内には2回ほどの切り上げがある。