経済産業省はこのほど、小売業を対象とした、新型インフルエンザ対策「事業継続計画の策定・運用の手引き」を策定した。

 新型インフルエンザ流行時に、小売業者は工場・オフィスなどの他の事業者とは異なり、従業員向け対策に加え、生活者が食料品などの生活必需品やインフルエンザを予防するためのマスクなどの商品を安心して買い求めることができるような対応が求められる。同時に、新型インフルエンザについては、自社の対応をあらかじめ検討し事業継続計画を策定することで、事業への影響を最小限に抑えることが可能になると考えられているため、経済産業省では、多くの小売業者が事業継続計画を策定できるよう、この手引きを取りまとめた。

 手引きでは、対応レベルとして3段階を想定している。そのレベルとは、レベル1「感染予防策を強化しつつ、ほぼ通常通りに営業する」、レベル2「商品・業務などを限定して営業する」、レベル3「一時的に店舗を閉鎖する」。

 2009年春以降に流行した新型インフルエンザに関しては、流行当初は混乱が見られたものの、結果的に小売業者の多くがレベル1の対応をとった。しかし今後、新たなインフルエンザの流行を考えれば、レベル2やレベル3といった対応をとらざるを得ない可能性も考えられる。

 とくにレベル2のケースでは、通常時の事業形態を大きく変更する必要がある。このため優先すべき商品や業務の絞り込みに関して、事前に周到に検討する必要がある。この手引きでは主に、このレベル2の状況に対応するための計画策定の考え方や対策などの進め方が解説されている。とくに、事業継続計画の策定・運用については、6つのステップにわたり解説されている。

 ステップ1「事業継続計画の基本方針の策定」、ステップ2「危機管理体制の構築」においては、事業継続計画は企業の存続にかかわる問題であるため、経営者が責任者となって対応することの必要性が訴えられている。ステップ1では、基本方針を検討する際の観点として、(1)自社の社会的責任・企業理念、(2)顧客・従業員・取引先などの関係者の安全、(3)商品・サービスの販売、の3つが挙げられている。またステップ2では、本社における危機管理本部の設置とともに、各店舗の店長を店舗危機管理責任者として定めることの必要性について言及されている。

 ステップ3「感染予防策の検討と実施」では、一般的な感染予防策について解説すると同時に、その対象を店舗と本社の両業務とすることや、感染予防策の実施に必要な物品の備蓄についても触れられている。

 ステップ4「事業継続の検討と対策の実施」では、(1)各業務が中断した場合の影響を分析する「事業影響分析」、(2)業務に必要な経営資源を洗い出す「リスク分析」、(3)事業継続のための「対策の決定」、(4)さらに「対策の実施」、の4段階について解説されている。

 ステップ5「教育・訓練」では、教育については、パート・アルバイトを含む全従業員を対象に、危機管理体制・感染予防策・事業継続計画に関する教育を行うことの必要性と、訓練としては、知識や行動の定着を図るために実施することの重要性について言及されている。

 ステップ6「事業継続計画の見直し・改善」では、状況変化に対応するために、計画の見直し・改善の実施の必要性について解説している。見直しのためには、社外および社内の観点の必要性について言及されている。社外の観点としては、(1)顧客の消費者行動変化、(2)政府の方針変更など。社内の観点としては、(1)人員・組織の変更、(2)新規事業・業態の実施や停止、(3)訓練の結果に基づく見直しが必要な項目の明確化、などが挙げられている。

 新型インフルエンザの流行時に生活必需品や感染対策商品の供給という社会的役割を持つ小売業だけに、その対応策の重要性は他の産業とは異なる。そのためにも日ごろから対策をとっておくことが必要だろう。


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