早くも第4刷が決定し、1ヵ月以上にわたりオンライン書店の「ロジカルシンキング」ジャンルで第1位に輝き続けている『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか ― 論理思考のシンプルな本質』。
本書の主題である「思考型人材」のモデルとして、元BCGの津田久資氏は当初から「いくつかの職業」をイメージしていた。その1つが「お笑い芸人」である。

そこで今回、東大卒→元マッキンゼーという「異色のキャリア」を持つお笑い芸人・石井てる美氏と津田氏による対談を企画。
マッキンゼーで身につけた思考法は「笑い」にどうつながるのか? ビジネス界とお笑い界の意外な共通点が見えてきた。異色の組み合わせによる対談、最終回!!

 

[前回までの記事]
「東大卒・元マッキンゼー」の芸人だけど何か質問ある?(上)
仕事も笑いも「スタンス」から始まる!

「東大卒・元マッキンゼー」の芸人だけど何か質問ある?(中)
「学歴なんて関係…」アリマス!!

 

お笑い芸人・石井てる美さん「言いづらいことを英語っぽく言う」

芸人が「お笑いスクール」に行く意味ってあるの?

津田久資(以下、津田)てる美ちゃんはマッキンゼーを辞めて芸人になろうというときに、「ワタナベコメディスクール」っていう芸人の学校に通ったんですよね。吉本で言うところの「NSC」とか、こういう学校では、いったい何を学ぶの?

「東大卒・元マッキンゼー」の芸人だけど何か質問ある?(下)石井てる美(いしい てるみ)1983年、東京都生まれ。東京大学工学部社会基盤学科卒業、同大学院修了。大学院在学中に執筆した論文では、アジア開発銀行による『アジア・太平洋論文コンテスト』入賞したほか、学内賞である古市賞を受賞。
2008年、経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社。お笑い芸人になることを志し、2009年夏に退社。
同年10月、お笑い芸人養成所ワタナベコメディスクールに11期生として入学。2011年にお笑い芸人として始動。2015年正月に「新春大売り出し!さんまのまんま」(関西テレビ・フジテレビ)で「言いづらいことを英語っぽく言う」ネタを披露。
TOEIC990点満点、英検1級。
著書に『私がマッキンゼーを辞めた理由 ——自分の人生を切り拓く決断力』(KADOKAWA)がある。

石井てる美(以下、石井)ネタ見せとか、ダンスとか演技とか、バラエティ番組を想定した実践がいろいろ用意されていました。あと、「お笑いのイロハ」みたいな座学の授業もありましたよ。

津田 へえ、座学もあるのか。ハーバード・ビジネス・スクールとかだと、いわゆる普通の講義というのはほとんどなくて、基本的にはケーススタディしかやらないですよね。
吉本のNSCとかワタナベのカレッジも、同じような感じかと思っていました。

石井 といっても、やはり実践が中心です。私は週3のコースに行っていたんですけれども、そのうち2回はネタを持っていって見せなきゃいけなくて……。
最初は「自分はこんなにネタがつくれないのか」と実感するところから始まりましたね。座学で習ったこととかも、初めのうちは全然生かせなくて……。
いろいろと試行錯誤しているうちに「フリってこういうことか……」ってわかってくる感じ。

津田 となると、ビジネスと同じで、お笑いにも「理論」と呼べるものは、やっぱりないのかな?

石井 「フリがあるからボケで笑いが成立する」とか「言っていることとやっていることが違う」「緊張と緩和」「共感」というような基本的な型はやっぱりあります。
もちろん、こういう型を知っているだけでは、面白いネタをつくるところまでは行きませんが。

津田 なるほど。それは「マーケティングの4P」とか「5F」とかのいわゆる「ビジネス理論」に近い感じですね。
大枠としては正しいけれど、結局そこから具体的なアイデアにまでは「距離」があるというか。