みずほフィナンシャルグループ(FG)は、8000億円規模の普通株増資とともに、「権力の二重構造」と批判が強かったFGの前田晃伸、みずほコーポレート銀行の齋藤宏、みずほ銀行の杉山清次の3会長揃っての退任を決めた。

 背景には、金融庁の強い姿勢があった。今年4月の第3週のこと。みずほFGの社長と、傘下銀行の2頭取は、金融庁の監督局長らに呼び出しを受け、極秘に会談を持った。会談自体は珍しくないが、「3人揃って、しかも事務方を同席させなかったというのはきわめて異例」(関係者)の事態だった。

 それだけ金融庁は、みずほの現状を「容認しがたいもの」(同)として受け止めていた。事情に詳しい関係者によれば、金融庁は席上、資本の問題に加え、収益力の低下に対し懸念を示したという。

 その要因として、組織が融合されていないこと、さらにトップが6人もいて「誰が決定権者なのかわからない」ことを挙げ、早急な対応を求めたというのだ。

 これにはみずほ側もあわてた。3会長は当初、来年まではその職にとどまるつもりだった。だが、当局から暗に退陣要求を突きつけられたとあっては、あらがうことはできなかったというわけだ。

 時を前後して、金融庁が義務づけた役員報酬の個別開示もみずほを揺さぶった。1億円以上の報酬を受けている役員の氏名と金額の開示を義務づけたもので、3会長はいずれも対象となるからだ。

「業績が振るわないなかでの開示はまずいと、前田会長と齋藤会長が膝詰めで対応を協議していた」と別のみずほ関係者は明かす。

 前田、齋藤両会長はみずほ発足時から8年間、杉山会長も6年間トップに君臨。その間、メガバンクトップから最下位に転落、一時は1000円台だった株価も、いまや150円前後と見る影もない。

 経営体制の刷新で業績を回復させることができるのか。名実共にトップとなった現経営陣の手腕が問われることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)

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