住友商事がボリビアで襲撃事件に巻き込まれた。

 4月中旬、住商が子会社を通じて保有するサンクリストバル鉱山をめぐり、鉱石の輸送事務所が地元住民に襲われたうえ、一時占拠される事態に陥ったのである。輸送用の鉄道、道路も封鎖され、鉱山は操業の縮小を余儀なくされた。

 政府や県に対し、地元へのロイヤルティ配分の引き上げや、インフラ整備を求めた抗議が行き過ぎたかたちで、怒りの矛先は住商側にも向けられた。襲撃、占拠、封鎖、なんとも物騒な言葉が並ぶが、総合商社が注力する権益投資では避けては通れない事件でもある。

 同鉱山は、亜鉛生産世界第6位、ボリビアの輸出総額の10%超を占める一大事業だ。総合商社としては初の100%権益でもある。

 住商側は開発に当たって、「かなり積極的に地域支援を行ってきた」と自負する。ただ、支援に慣れた地元住民からの要求は往々にしてエスカレートしがちである。

 そのため権益投資では、地元の住民対策が不可欠。いかに地域と折り合いをつけつつ、開発を進められるか、誠実なだけでなく、したたかで周到な戦略が必要となる。

 権益保有は、仕切り役のオペレーターとノンオペレーターに大別されるが、総合商社の権益投資は大半がノンオペレーターだった。オペレーターとして事業を運営する住商にとって、地元対策のノウハウはまだ乏しい。

 米国では今、メキシコ湾の原油流出事故が大々的に報じられているが、10%出資している三井物産の幹部は「オペレーターとして参画していたら、対応できなかったのでは……」と吐露する。

 ボリビアの事件では、占拠、封鎖は解かれたが、いつまた過激化してもおかしくない。100%権益は失敗がすべて自社に跳ね返ってくる。今回の経験を生かせるか、今はノウハウを積み上げていくしかない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

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