自公協議が難航する理由の1つ
消費税の「益税」とは何か?    

消費税の自公協議を難航させる「益税」という火種消費税軽減税率の自公協議が難航しているが、議論の1つに消費税の「益税」という問題がある。「益税」とは何だろうか。

 消費税軽減税率の自公協議が難航しているが、その際の議論の1つに消費税の「益税」という問題がある。インボイス制度のないわが国では、消費税率が上がり、複数税率になると、この問題はますますクローズアップされる。国民にとっての「消費税制度の信頼」という観点から、この問題を捉えていく必要がある。

 とは言っても、「益税」とは何を意味するのか、必ずしも十分な理解がされているわけではない。

 一般的に「益税」というのは、「消費者から預かった税金が税務署に納められず事業者の手元に残ること」である。

 具体例としてよく引き合いに出されるのは、次の例である。

 免税業者がモノやサービスを販売・提供する際に、税抜価格を1000円とすると、別途消費税と称して80円を上乗せし、消費者に1080円を請求するといった場合である。

 では80円が「益税」か、というとそうではない。免税業者といえども、仕入れに際しては消費税を負担している。また、仕入れのような直接コストのほか、電気、ガス、水道、電話などの間接コストにも消費税負担がある。彼らが自らのマージンを確保するには、これら直接・間接コストにかかる消費税額は、消費者に転嫁する必要がある。

 これらの直接・間接コストの総額が800円(税抜き)とすれば、これに対してかかる消費税額64円は、顧客に転嫁すべきものということになる。そうなると、免税事業者の「益税」分は80円ではなく、そこから仕入れにかかる消費税分64円を差し引いた16円ということになる。

 免税事業者の場合、図の青色部分、すなわち自らの付加価値部分(マージン)は納税する必要はないので、それに対応する消費税額(16)をお客に要求すれば「益税」となるが、仕入れにかかるB(64)はお客に転嫁する必要がある。そうでなければ自らのマージン(200)が減ってしまうのである。つまり、免税事業者の「正しい」(益税の発生しない)販売価格は1064ということになる。

消費税の自公協議を難航させる「益税」という火種