ギリシャ危機が他のユーロ加盟国に“伝染”するのを防ぐため、5月10日に欧州各国政府、IMF、ECBは緊急安定化策を発表した。各国政府、IMFが用意する総額7500億ユーロは、市場を落ち着かせるための“見せガネ”としてはひとまず十分な金額だった。

 しかし今後は、ギリシャの財政再建策が実際に成功するのかどうかが注目される。そこに再び疑念が生じると、金融市場が再び不安定化する恐れはある。

 10日の欧州当局の発表でいちばん意外感があったのは、ECBによる国債買い入れ策である。6日の記者会見の冒頭で「なぜギリシャ国債を購入しないのか?」と聞かれたトリシェECB総裁は「われわれはそれを議論していない」と答えていた。

続く2人の記者もしつこく同じ質問を繰り返したが、彼は「先ほども言ったようにわれわれは議論していない」「議論していない。ほかに言うことはない」と返答していた。

 それが一転し、10日にECBはゴーサインを出し、傘下の加盟中央銀行はギリシャ、ポルトガルなどの国債の買い入れを開始した。

 その決定にドイツ・ブンデスバンクのウェーバー総裁ら一部は強く反対した模様だが、トリシェの出身国であるフランスのテレビ局F2は10日に、「トリシェ総裁はユーロ圏政府の圧力に屈した」と報じていた。