大正時代から現代まで、その時代の経済事象をつぶさに追ってきた『週刊ダイヤモンド』。創刊約100年となるそのバックナンバーでは、日本経済の現代史が語られているといってもいい。本コラムでは、100年間の『週刊ダイヤモンド』を紐解きながら、歴史を逆引きするのがテーマだ。初回となる今回は「ギリシャ危機がなぜ起きたのか」、その歴史を逆引きしていく。(坪井賢一)

ギリシャ危機からユーロ暴落へ
EU支援でもおさまらない市場の動揺

 2009年10月に明らかになったギリシャの財政危機に端を発するユーロの動揺は、2010年5月第1週に世界金融市場を大きく揺さぶった。ユーロは暴落し、超円高となり、世界の株式市場は連鎖的に大きく下がったのである。

 5月9日日曜、市場に促されて欧州連合(EU)は27か国による緊急財務相理事会を開き、ユーロ圏で危機に陥った国を支援するための緊急融資枠を設定した。IMFの2500億ユーロを含めて最大7500億ユーロ(約85兆円)の支援策を明らかにし、市場の動揺を沈静化しようとしたのである。予想より対策の規模が大きく、市場はいったん好感して激しい動揺はおさまったのだが、その後もユーロ不安は断続的に続き、動揺は繰り返されている。

 この対策の当面の対象はギリシャだが、波及する恐れのあるポルトガル、スペイン、アイルランドなどをにらんだものである。

 しかし、この大規模な融資枠設定でも根本的な解決はまだ先の話だ。リーマン・ショック(2008年9月)によってEUの不動産バブルも崩壊し、とくにポルトガル、スペイン、イギリスなどの傷が深い。イギリスは総選挙で労働党が破れ、保守党と自民党の連立政権が成立した。

IMFが本来“無関係”の
「ギリシャ財政危機」を救った理由

 ユーロ圏の危機には2種類ある。1つはギリシャのような財政危機、もう1つは不動産バブル崩壊による金融危機だ。じつは、通常IMFが乗り出すのは金融危機で、国際収支のマイナスをファイナンスすることがミッションである。

 ギリシャの場合は完全に財政危機であり、IMFは本来、無関係なのだ。しかし、ギリシャ企業に融資したり、ギリシャの短期国債を購入している金融機関はドイツ、フランスをはじめ、EU内にいくらでもある。ギリシャ危機が深まればあっというまに金融危機が連鎖し、ユーロが崩壊してしまうのだから、IMFが乗り出すのは正しいことである。