イノベーションには「正義」が要る。昨今のスタートアップを見ていると(その志願者、予備軍も含めて)、どうもそのことを忘れている。というか理解していないように思う。というわけで今回は、スタートアップとイノベーションの話。

*注)厳密に言えばスタートアップとベンチャーは違うし、VC(ベンチャーキャピタル)とエンジェル投資家も違うという意見もある。確かにそうだが、本稿では便宜上(話がややこしくなる)という理由と、現在の日本のメディアではおおむね、そのあたりは緩い使われ方をしているので、スタートアップとベンチャー、VCとエンジェルはほぼ同義として扱う。

スタートアップバブルがやってきた!?

そこに正義はあるか? スタートアップバブルへの警鐘いまの時代のスタートアップに求められる「正義」とは?

 どうやら昨今は「スタートアップがブーム」だそうだ。「バブル」だという人もいる。IPOコンサルティングやM&Aアドバザリー等の財務助言を行っているプロジェクト・オーシャン代表取締役の早川智也氏によれば、とにかくいまはスタートアップに資金が流れていて、二桁億円の資金調達もそれほど珍しくはない状況だという。一昔前は数千万円の資金調達にも苦労していたスタートアップ業界だが、いまではむしろそのような少額の資金調達のほうが珍しいという。

 実は、この記事は昨年7月に寄稿されたものだが、今年の7月頃にもテレビ東京系の経済ニュース番組『ワールドビジネス サテライト(WBS)』でも同様の内容の特集が放送されていて、この流れは衰えていないようだ。

 日本のスタートアップに資金が流入している原因として、早川氏は「2000年や2005年前後に成功を収めた起業家、意識の高い独立系ベンチャーキャピタルたち」を挙げる。また、WBSの報道によれば、シリコンバレーなど海外からも資金が入ってきており、それもまた日本のスタートアップ相場を急騰させている原因となっているようだ。

 スタートアップ業界の活況とともにIPO件数も増えているようで、一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンターが発行する『ベンチャー白書 2015』によれば、2014年度のベンチャー投資額は総額で1171億円。うち、国内VC106社による国内投資額は740億円、対前年比3.1%増。2012年度以降、国内投資額は増加しているという。また、IPO数も2011年以降増加中だ。

 ただ、ベンチャー投資額もIPO数も、活況を呈した2000年頃および2005-2006年頃に比べたらまだまだ少ない。ベンチャー投資額でいえば、2000年度は2825億円、2006年度は2790億円で、それに比べれば、2014年度は1171億円と半分以下。2012年度以降、国内投資額が増加しているとはいえ、かつての最盛期と比べればかなり少ない状況だと言える。ちなみにIPO数も、2006年の188社に対し、2014年は75社。この数字だけ見れば、いまのベンチャー業界は必ずしもバブルと呼べる状況ではなさそうだが、しかしリーマンショック後に落ち込んだ状況からは回復基調にあることは確かだ。