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液晶事業再編に立ちはだかる
供給過剰と過小資本の障壁

シャープ・JDI液晶統合「新・日の丸液晶」に勝機はあるか(下)

「今後の経営リスクを考えれば、4.5世代以下の工場は思い切った整理が必要だ」

 シャープの液晶事業に長年携わってきたOBの一人は、同業のジャパンディスプレイ(JDI)との統合を見据えた上で、そう話す。

 2016年以降、中国の京東方科技集団(BOE)や台湾の群創光電(イノラックス)、友達光電(AUO)など海外勢が、スマートフォン用など高精細(低温ポリシリコン、LTPS)の液晶を製造する、第6世代の工場を相次いで立ち上げるからだ。

 液晶が世界的に供給過剰に陥る懸念が強まる中で、ガラス基板サイズが小さく、競争力が劣る4.5世代以下の工場は、減損処理などのリスクが今後は一層高まる。

 両社の液晶工場を見渡すと、4.5世代以下は計8拠点。簿価を合計すると、1000億円以上にもなる。

 中には、両社とも成長戦略の柱としている自動車用の液晶パネルを手掛ける工場があり、品質面における「(自動車)メーカーからの認証手続きを考えると、すぐに整理するのは難しい」(同OB)。ただ、それでも一部は段階的に閉鎖・売却に向けて動かざるを得ないだろう。

 そのとき必要になるのは、減損などのショックを吸収できる、分厚い自己資本だ。

 JDIと、シャープから分離する液晶事業の自己資本の合計額は、推計で4000億円弱。ピーク時に1.2兆円を超えていたシャープ本体の自己資本が、主に液晶事業による損失によって、15年3月に400億円台にまで激減したことを踏まえれば、決して十分とはいえない水準だ。

 仮に1000億円規模で産業革新機構の出資があったとしても、そこに3000億円前後とされる液晶事業にひも付く借金が、“置き土産”のようにセットで付いてきた場合は、なおさら心もとない。

 革新機構が債務の株式化(DES)など、銀行に一段のリスクテイクを足元で求めている背景には、そうした要因もある。

 今後もし、交渉の過程で革新機構と銀行双方の腰が引け、中途半端な支援策で手打ちとなった場合、競争力のない既存工場の大半は温存され、新たな日の丸液晶連合の経営は、早晩行き詰まるだろう。