国土交通省は6月25日、宇部三菱セメントのコンクリートの一部が、建築基準法で求められる大臣認定仕様に適合しないと発表した。問題の製品は超高層に利用される特殊品で、東京・埼玉・神奈川の建物計90棟で使用されていた。物件名は非公表だが施工業者の大半はスーパーゼネコンで、都心近郊のタワーマンションなどが該当すると見られる。

 2008年7月にも神奈川県の生コン業者が、JIS規格不適合品を規格品と偽り196ヵ所に納入、建設業界、マンション業界に大混乱を来した事件があった。

 今回の不適合品はセメントを水に溶く際の化学反応で発生する熱量が、本来の基準より若干高くなるもので、強度上は問題がない。国交省はこれを理由に不適合品にも順次大臣認定を出す措置を早々に打ち出した。だが、前回の偽装時も、JIS規格不適合品に大臣認定を後追いで与える同様の措置が取られた。混乱を避けるためやむをえないとはいえ、常態化すれば大臣認定の形骸化にもつながりかねない。

 メーカー、商社、地元生コン会社、搬送会社、施工するゼネコンなど多くの企業がかかわる生コンの品質偽装問題は以前から繰り返されてきた。その影響も甚大だ。

 前回も建設が中断し、販売時期が2年ずれ損失を被った大手マンションディベロッパーもいた。今回も、大手のタワーマンションで販売を休止した物件が複数あり、販売の現場では混乱が起きている模様だ。

 国・生コン業界・ゼネコン業界横断での再発防止のための抜本的な対策が必要だ。「臭いものにフタ」で終わっていいはずがない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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