先日、作家の村上龍氏が今年初めまで文芸誌に連載していた長編小説「歌うクジラ」を電子書籍として配信することがニュースとなった。映像や音楽も盛り込み、出版に先駆けて1500円で発売するという。人気作家の最新作が出版に先駆けて電子書籍化されるというこのニュースは、電子書籍の勢いを象徴するものとして一部で衝撃的に受け止められた。

 5月末のiPad日本発売と相まって一気に加速する電子書籍熱。一般消費者の反応はどうなのか。楽天リサーチ(東京都品川区)は6月25日に「電子書籍に関するインターネット調査」を発表した(全国の20~69歳の男女1000人が対象)。

電子書籍、認知率は約7割
利用意向は約6割

 まずは電子書籍の認知率。「よく知っている」(19.5%)、「やや知っている」(53.2%)、「あまり知らない」(23.5%)、「全く知らない」(3.8%)。昨年の同じ調査と比べて最も変わったのは「全く知らない」人の割合で、昨年の8.7%から約5ポイント下がった。

 続けて利用意向を聞いたところ、「利用したこともあるし、今後も利用したい」(10.8%)、「利用したことは無いが、今後利用したい」(53.5%)、「利用したことはあるが、今後利用したくない」(3.9%)、「利用したことは無いし、今後も利用したくない(31.8%)という結果だった。「利用したことは無いが、今後利用したい」と答えた割合が前年(33.2%)から大きく伸び、「利用したことは無いし、今後も利用したくない」が前年(43.3%)から10ポイント以上減少した。

「今後利用したい」割合が合計64.3%、「利用したくない」割合が合計35.7%。この結果を「意外に利用したい人が多い」と感じるか、「利用したくない人が多い」と感じるかは、反応が分かれるところではないだろうか。

電子書籍熱は意外に低い?<br />「利用したくない」35.7%の人が抱える“拒否感”

利用したくない理由トップは
「読むのが疲れるから」

 また、利用意向のある人(643人)に電子書籍を利用したい理由を複数回答で聞いたところ、トップは「何冊も書籍を持ち運ぶ必要がなく、手軽になるから」(64.5%)。「すぐに欲しい書籍を購入し、手元にダウンロードすることができるから」(52.4%)、「1冊当たりの単価が下がり、購入するコストを抑えることができるようになると思うから」(48.4%)が続く。

 利用意向のない人(357人)になぜ利用したくないかを聞いたところ、「電子画面で文字を読むのが疲れるから」(61.3%)がトップ。次いで「紙で読む習慣がついているから」(55.5%)、「読んだ気がしないから」(25.8%)となった。

 iPadの普及により電子書籍の需要が喚起されるなか、端末についての回答はどうだろう。利用意向のある人の中で、利用したい理由として「電子書籍を読む端末が普及したから」を選んだ人は19%と高い割合ではなく、利用意向のない人のうち「電子書籍を読む端末が充実していないから」と回答したのも20.2%で4位だった。

 最新のツールを手に取るか取らないか。最終的な判断は個人の感覚に委ねられる。携帯電話や、新しいところではツイッターが受けてきた「拒否感」を電子書籍も乗り越えていくのだろうか。

(小川たまか プレスラボ)