公的不動産の老朽化や活用方法に悩む自治体は多い。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーでは、組織横断型のタスクフォースを立ち上げ、自治体が抱える問題の解決に向けて本格的に乗り出している。

施設老朽化や人口減少
差し迫る自治体の危機

 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下、DTFA)はこのほど、新たなタスクフォースとして「官民連携支援室」を立ち上げた。その最大の狙いは、地域が有する不動産や事業への民間活力の導入支援にある。

 地方自治体では多くの公共施設が老朽化し、その維持コストが財政を圧迫している。一方で、高齢化と人口減少が進む中、行政サービスやコミュニティ機能は地域特性に見合う最適な姿で維持継続したい。

 こうした状況にあって、すでに危機意識の強い一部の自治体では、首長が公共施設を含む公的不動産や自治体にとって悩みの種である工場跡地などをどのように地方創生と絡めて活用、あるいは再配置するかを真剣に検討し始めている。自治体の財政上、財政出動の余地が限られていることから、PPPなど民間活力の導入を検討する自治体が増えている。

 しかし、自治体においては人的資源をはじめとするリソースが不足している上、「誰を巻き込んで、どのように進めればいいのかが分からないというのが、悩みの種のようです」と、DTFAのインフラ・PPPアドバイザリー統括パートナー(官民連携支援室兼任)の山田泉氏は語る。

 自治体が旗を振って民間を巻き込み、まちづくりや産業集積地の形成を実行したいといった漠然とした構想はあるのだが、具体的にどう進めていくかという点になると立ち往生してしまうのだ。

 民間活力の導入に際して最も大切なのは首長の強い意志とリーダーシップであることは間違いないのだが、それだけでは官民連携は前に進まない。民間が興味を示すシナリオを描き、民間にとってリーズナブルな、つまり事業性が成り立つ条件を行政側の支援体制を含めて提示することが肝要となる。

 行政側があれもこれもと条件をつけてしまった結果、民間としては妙味のない案件になってしまうというケースをよく耳にする。この点に関してDTFAの不動産アドバイザリー統括パートナー(官民連携支援室兼任)の橋本知一氏は、「何のために民間活力を導入したいのかという最初の目的がぼやけてしまうと、立地が有するポテンシャルを発揮できず、当初の目的が達成できないという大変不幸な状況になってしまいます」と指摘する。