相続等で生じる「遺産分割事件」(審判+調停)の数(新受件数)が増え続けている。1996年には1万件強だったものが、2012年には1万5000件を突破している(最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)平成24年度」より)。

 そんな中、遺産分割をはじめとする相続案件に強みを発揮するのが東京・神田に拠を構える森川法律事務所だ。

10人を超える想定外で
未知の相続人が出現!

森川紀代 弁護士
1992年、横浜国大経営学部卒業。大手企業で金融システムの企画開発に携わる。99年、司法試験合格、01年弁護士登録。10年、現事務所開設。第一種情報処理技術者の資格を有する他、東京地裁の民事調停官、大手企業の監査役、日弁連知財センター幹事等を歴任

――首都圏に住む夫を亡くした高齢の奥さんから、遺産分割の相談・依頼があった。というのも、亡くなった夫には異父母等から産まれた十数人の兄弟姉妹がいたことがわかったからだ。生前、夫からは兄弟は1人と聞かされていたのに……。

 依頼人には子がなく、配偶者への法定相続分は4分の3。残る4分の1を、十数人の兄弟姉妹で分ける(血縁関係によって相続分は各人微妙に異なる)ことになるが、遺産は自宅のみで、現金や株のように容易に分割できない。

 途方に暮れる依頼人を励ましつつ、同事務所森川紀代弁護士は全国に散らばる高齢の相続人一人ひとりに接触。結果、相続財産の「放棄」ではなく「譲渡」という手法を用い、全員の了解を取り付けることに成功。依頼人の奥さんは、現在も夫が残してくれた自宅に無事に住み続けている――。

 このケースでは、相続分の放棄ではなく譲渡を用いたことがポイントといえる。

「大まかな計算ですが、たとえば兄弟を10人、資産を3000万円と仮定したとき、相続分は兄弟全員で750万円(1人75万円)となります。『放棄』だと、もし1人だけ放棄してくれない場合、その1人に750万円の権利が発生します。一方、『譲渡』なら、応じてくれなかった1人の権利は75万円ですみます」(森川弁護士)。

 というのも、相続を「放棄」した場合、法律上は放棄した人が最初から“いなかった”ものとみなされるからだ。なお、全員が「放棄」も「譲渡」もせず、遺産を全部奥さんに取得させると合意することは可能だ。けれども、兄弟のうちたった1人でも異議を唱えれば、合意が成立しないため、奥さんは「放棄」も「譲渡」もしていない兄弟全員を相手に、調停などを申立てなければならない。

「十数人との連絡や話し合いは同時並行で、途中では全員が納得してくれるかどうかわかりませんでした。万一、話し合いがこじれ、調停や審判に至る場合でも、相続分譲渡の活用で、依頼人の負担を減らせるという判断です」

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