企業を顧客とする弁護士の多くは、銀座や虎ノ門に事務所を構える。しかし木村昌則弁護士は、2014年の独立に際して、あえて新宿を選んだ。

「開業するならターミナル駅の近くと決めていました。個人の依頼者の方でも気軽に来れるような、垣根の低い事務所を開きたかったんです」(木村弁護士)。

 売りは「若さとフットワークの軽さ」。最近は、中小企業の債権回収や個人間の金銭トラブルを多く手がけている。

債権者と債務者が
共存する道を探る

木村昌則 代表弁護士
慶應義塾大学法学部卒業。2006年に弁護士登録。大手弁護士事務所で培ったノウハウを活かし、企業間の債権回収や事業再生などに取り組む。労働問題や、刑事弁護にも精通

 3ヵ月先の資金繰りに窮した卸売会社から受けたのは、事業再生または倒産の相談。木村弁護士が分析したところ、年間売上が数億円規模なのに、未回収の売掛金がおよそ10%もあった。木村弁護士は「債権さえ回収できれば、この会社は破綻から救える」と判断した。

「相手の経営不振が原因で売掛金が未払いになっている場合には、書面や面談での交渉を重ね、分割払いによって債権を回収しました。また、製品の企画書や仕様書に目を通した上で、不当クレームだと判断した相手に対しては速やかに訴訟を提起し、勝訴または勝訴同然の和解で代金を払ってもらうことに成功しました」

 この結果、倒産の危機に瀕していたクライアントは債権の大部分を回収できた上、経営改善にも成功したという。

「クライアントにとっては、債権回収によって危機を脱した後こそが本当の正念場。だから僕は、差し押さえは最終手段だと考えています。債務者は、その後の経営再建を図るために欠かせないビジネスパートナーでもありますから」

 強硬なやり方はクライアントのためにならない。事業再生を数多く手がけてきたからこその視点だ。

 新人として所属した大手事務所で事業再生のノウハウを培った後、大手総合商社で社内弁護士を務め、労務管理や物流業界の内情にもくわしくなった。現在では、不当解雇や賃金カットなどの労働問題も積極的に引き受けている。

「労働問題でも、ビジネスの現場で得た経験が活きています」

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