「エージェント制」の導入やヤフーとの提携など、これまでにない不動産取引サービスを提供しているソニー不動産。不動産業界に新しい風を吹かせる、独自のビジネスモデルについて聞いた。

戦略企画・管理担当
執行役員
青柳 政孝氏

 2014年8月、業界内外の注目を集めて営業を開始したソニー不動産は、公平性、合理性、専門性の徹底追求による「顧客満足度ナンバー1不動産会社の実現」を掲げ、従来の商習慣とは異なる独自のサービスを次々と打ち出している。

 同社戦略企画・管理担当の青柳政孝執行役員は言う。「私たちはこれまでの不動産業界を否定しているわけではありません。ただ、新規参入する以上、ソニーグループとしての視点やテクノロジーを生かし、不動産取引に新しい価値と選択肢を提供していきたいと考えています」。

 同社が提供するその「新しい選択肢」の最たるものが、売買仲介サービスにおけるエージェント(代理人)制の導入だろう。

米国流エージェント制で
顧客の利益を追求

 不動産取引において、仲介会社は、売主または買主だけを担当する場合と、買主と売主の双方を担当する場合があり、前者を「片手取引」、後者を「両手取引」という。仲介会社にとっては、1回の売買契約の成約で仲介手数料が2倍得られる両手取引の方が都合が良い。ただ、高く売却するためにはできるだけ広い範囲で買主を探すべきところを、両手取引を行うために自社の顧客の中からのみ買主を探す場合には、売主のより高く売却できる機会が阻害されることになりかねない。土地の権利関係が複雑に絡み合っているような場合など、売主と買主両方に密接に関われる両手取引が相応であるケースは存在するが、一般的に両手取引は透明性に欠けるという印象は拭えず、米国の多くの州では法律で禁止しているほどだ。

 同社では、物件の売却は売却専門のエージェントが、購入は購入専門のエージェントが担当する米国流のエージェント制を導入し、両手取引を原則として行わない。それぞれを別組織にして、システム上でも情報共有できないようにする徹底ぶりだ。

売却コンサルティング事業部
部長
望月 弘氏

 これにより、売却エージェントは売主の利益を追求することだけに専念できる。売却物件について幅広くいろいろな仲介会社に声を掛け、少しでも高く買ってくれる買主を探すのである。また価格交渉の際も、売主側の立場から粘り強く交渉に当たる。また買主にとっても、仲介会社が売主から預かっている自社物件に誘導されることなく、希望条件に合致する物件を納得するまで探すことができる。

 売却コンサルティング事業部の望月弘部長はこう語る。「これまで数多くの案件を手掛けてきましたが、当社では、売却エージェントが担当することで相場よりも高めの成約が実現しているというのが実感です」。