中国で現地法人を経営している総経理にとって、頭痛の種の1つが「従業員の不正行為」だ。

 中国では、調達部門担当者や責任者が会社に隠れて取引先からリベートをもらうのは当たり前。社内における自分の権限を利用して、自分の家族や親戚が経営している会社(そのためにわざわざ新たに会社を作る場合もある)を取引先の1つとして潜り込ませ、その息のかかった取引先を通じて会社の利益をかすめ取るといった行為も、「常套手段」となっている。

 中国の場合は、夫婦別姓で、なおかつ社員同士でプライベートの話をあまりしないことが多いため、こういう行為が横行し易い。

 また、日本人には信じられないだろうが、闇に紛れて製品、原材料、廃棄物、備品などを社内から盗みだし、市場で高く売る輩までいる。

警察に駆け込んでも「望み薄」
不正社員の排除は想像以上に難しい?

 ここまでやられたら、当然、総経理としても黙っているわけにはいかない。「そんな不届きな輩は徹底的に懲らしめてやろう」と憤慨し、公安(警察)を呼ぶ総経理もいるだろう。

 しかしながら、多くのケースでこの方法は、うまくいかない。そういう不正を働くヤツに限って、証拠を残さずシラを切り通すので、法律・法規で罰することが難しいからだ。

 また、公安も実際のところ、あまり頼りにはならない。「ウチの会社は全面的に捜査に協力するから、徹底的に調べて犯人を捕まえてください」と総経理が被害届を公安に持っていったところで、「それは大変ですね。わかりました。ただし被害届を受理する前に、その容疑者が犯人だと特定できる証拠を全て揃えてきてくださいね」と、丁寧な言葉で追い返されるのがオチだ。

 中国の公安担当者は、個人の利益を優先しがちだ。一度被害届を受理した後で、「調査してもやはり起訴できなかった」となると、公安担当者自身の出世に響くからだ。