自工程完結の最後、『トヨタの自工程完結』のポイントの6番目は、「仕事を振り返り、得られた知見を伝承する」です。トヨタの新しい仕事の進め方は、これで完結します。

 ここまで、「目的・ゴール」「最終的なアウトプットイメージ」をはっきりさせた後、「プロセス/手順」を洗い出し、そのプロセスごとに「判断基準」と「必要なもの」を明確にする。そして、各プロセスで「これで良し」と自信を持って仕事を進め、アウトプットにつなげていく。これらを、自工程完結のポイントとして、トヨタの新しい仕事の進め方として紹介してきました。

 そして、その最後に加わるのが、仕事の結果が良かったか、良くなかったかを振り返り、良くなかった場合には、どこに問題があったのかを確認し、修正していくことです。

 また、結果だけでなく、「目的・ゴール」「最終的なアウトプットイメージ」が良かったか、「プロセス/手順」や「判断基準」「必要なもの」に抜け・漏れや間違いがなかったかを振り返ることも重要です。

 結果には必ず原因があります。良い結果が出なかったとすれば、間違いなく、どこかの進め方に問題があったのです。それを放置したままにすれば、また同じ結果になってしまいます。これでは、生産性も上がりませんし、頑張っているのに結果が出ず、モチベーションも上がっていきません。

どんな問題があったかを振り返れない人は、<br />同じ失敗を繰り返します

 そのためにも、大事なことがあります。それは、「プロセス/手順」「判断基準」「必要なもの」のどこに問題があったかを振り返り、改善策を書き残しておく、ということです。

 例えば、毎週、毎月、毎期、毎年といった定例的な仕事をしていくとき、いったいどのようにして仕事を進めていったのか。作業の(1)~(5)を書き記したものがあれば、次に同じ仕事をするときに活用することができます。

 そうすれば仕事をするたびに、最初から進め方に悩むことなく、仕事に取りかかることができる。スピードが速まることは言うまでもありません。そして、次にも使うからこそ、振り返り、書き残したものをアップデートしていくのです。

 単純に「マニュアル」と呼んでもいいかもしれません。しかし、従来多くの会社にあるような簡単なマニュアルではありません。そこにはプロセスや手順は書かれているかもしれませんが、「判断基準」「必要なもの」は書かれていなかった。それでは、すぐに使えるものにはなりません。もっと詳細なマニュアルが必要なのです。

 これがあれば、例えば担当者が替わったときにも、同じ仕事をすぐに新しい担当者に引き継いでいくことができます。先にも書きましたが、とりわけスタッフ部門で生産性を阻害している理由の一つには、知見がまったく伝承されていないことが挙げられるのです。

 異動などで新しい担当者に替わったら、またゼロから仕事を始めなければいけない。もし、そこに「プロセス/手順」も「判断基準」「必要なもの」もしっかり書かれたマニュアルがあったとしたら、どうでしょうか。それは大いに活きてくるものになるはずです。