飛行機のなかで急な「パニック発作」に襲われ
息ができない恐怖と闘うことになったRさん(40歳)

業界全体に暗雲が…
少ない人数で以前より成果を求められる

 Rさんは大手自動車会社系の商社マン。自動車やトラックの原料を海外で調達するのが主な仕事だ。Rさんは入社以来、鉄鋼一筋で、南米やアフリカの輸入を担当してきた。原料が調達できないと、クライアントの生産ラインを止めるという大きな損害を与えてしまう。相場や為替にも左右される気の抜けない仕事だ。今まで、どんなに多忙でも「自動車産業が世界経済を牽引する」というプライドがRさんを支えてきた。

 しかし、ここ数年、社内の雰囲気は険悪だ。経営陣は、早期退職やグループ会社への出向社員を増やし、人件費を削減。そうして生き残りをかけている。Rさんが育てた優秀な部下たちのほとんどが、グループ会社へ出向することになってしまった。

 不景気では、少ない人数でより大きな成果を求められる。Rさんのチームは、連日深夜残業するのが当たり前になっていた。そうしたなか、ある日の深夜、アフリカからオフィスに電話が入った。「トラブルが起きたのですぐ来てほしい」と。

飛行機のなかで突然起きた発作!
息ができないほど苦しい

 アフリカへは中東経由で入ることが多い。数年前まで出張は、部下と一緒のことが多かったが、最近はほとんど1人だ。気楽でもあるが、「何かあったら」とどこかで不安感もある。

 アフリカから連絡のあった翌朝、タクシーで成田に向かい、一番早い便のチケットを確保した。飛行機に乗り込むと、昨夜は一睡もしていないのに、シートに座ると頭の芯がはっきりして眠れなかった。だが、しばらく目を閉じていたら寝てしまったらしい。「あと30分で空港に着陸する」という機内アナウンスで、目を覚ました。

 ちょうどそのときだった。、Rさんは、人生ではじめて経験するほど激しい“パニック”に襲われた。

「い、息が苦しい…!」

「このまま死んでしまうのでは」という思いが頭をよぎった。そして叫び出したいほどの不安感を感じた。

 窓側にいたが、通路側に行き、誰かに助けを求めようと思った。しびれる手でシートベルトを外して、やっと通路に出た。まずトイレに行き、自分の顔を確かめた。ひどく不安な顔をしているが、別に変わったところはない。しかし何かが変だと思った。