消費税増税、社会保険の負担増、教育費の高騰などで貯金が少ない40代、50代。今の日本人の平均寿命は83歳で、60歳定年から平均で23年もある。老後年収200万円で20年以上安心して暮らすためには、老後のお金の現状を知っておくべきである。

ダイヤモンド・オンラインでも人気の連載「40代から備えたい 老後のお金クライシス」を書いている深田晶恵さんが、『定年までにやるべき「お金」のこと』という本を上梓。この内容をベースに、お金に不安がある人たちに役立つコンテンツを紹介していく。

安心をウリにしている「医療保険」は<br />本当に必要なのか?

医療保険は本当に
頼りになるのか?

現在、年収が800万円あっても、年金収入は200万円。これで25年生きるとするとムダなお金は使えない。

前回は生命保険の話をしたが、今回は医療保険について。医療保険は「必ず入っておくもの」と考えているかもしれないが、これは誤解に基づく思い込みである可能性が高い。

あなたは、本当にいざというときに医療保険がどれだけ頼りになるものなのか、検証したことがあるだろうか?まず、医療保険でお金がもらえるのは、原則として「入院か手術をしたとき」であり、病気にかかる費用をすべてカバーしてくれるわけではない。

最近は、国の方針として入院は短期化の傾向にあるし、医療技術の進歩により、入院せずに外来でできる高度な治療も増えている。

外来でかかる治療費は医療保険ではカバーされないので、月々の収入や貯蓄から捻出することになる。

同じ病気で再度入院したら
給付金が満額もらえなかった!

では、病気で入院して手術を受けたとして、医療保険からどれくらいのお金がもらえるのか。「入院日額5000円(1入院120日型)・手術給付金は内容に応じて入院給付金の10倍、20倍、40倍」というタイプの医療保険に加入しているとすると、

◦入院給付金……1入院で最大60万円(5000円×120日)
◦手術給付金……手術内容に応じて5万円、10万円、20万円のいずれかの金額

つまり、このケースでは最大80万円になる。

さらに、ここで「1入院」の定義には注意が必要だ。保険会社の約款には、「同じ病気や関連する病気で180日以内の再入院は“1入院”としてみなす」とある。

たとえば、抗がん剤治療を複数回にわたり入院して行う場合、1クール目が終わるといったん自宅療養で1〜2ヵ月体を休め、再入院して2クール目の抗がん剤治療を受けるとすると、2回の入院は通算して「1入院」としてカウントされる。

私の身内の場合、白血病になって最初に60日間入院し、1ヵ月間の自宅療養の後に70日間入院した。「1入院120日型」の医療保険に入っており、それぞれの入院が120日以内なので、本人は「60日間分と70日間分の入院給付金を受け取れる」と思っていたようだが、再入院が180日以内だったため2回の入院は「1入院」とカウントされ、120日を超える10日間分については入院給付金の対象外となった。

もちろん前回の入院から、退院している期間が180日(約半年)を超えるとリセットされて、1入院の縛りはなくなり、その日数通りに支払われるのだが、実は医療保険には保険期間を通じた「限度日数」という制限もある。

その日数は、「730日」、「1000日」など契約により決まっている。限度日数が730日だった場合、数年にわたって何度か入院したとして、トータルで入院した日数が730日を超えた場合、それ以上は支払いませんということだ。