消費税率の引き上げが2年半延期されることになった。2014年11月に安倍晋三首相は次のように述べていた。「さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(17年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」。

需要“先食い”のツケが回った<br />消費税率引き上げ延期の真因エコカー減税や家電製品のエコポイントなど、複数の政策が重なった結果、予想以上の駆け込み需要が生まれた Photo:JIJI

 また、今年1月10日にNHKの番組で安倍首相は、「今度は前回のような景気判断は行わず、リーマンショック級のような世界的な出来事が起こらない限り、予定通り8%から10%に引き上げていく考えです」と説明していた。

 5月26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で安倍首相は世界経済のリスクを強調した。確かに潜在的なリスクはあちこちに見え隠れするが、年初からの世界的な市場の混乱は、2月上旬に底を打ったという見方が主流だ。原油価格はそれ以降、上昇傾向にある。米国、英国、ドイツ、フランスの主要紙では、今回の日本側の説明に共鳴する論調は見られなかった。

 しかも、翌27日にジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、「米経済は改善が続いており、成長は上向いているように見える」「ゆっくりと持続的に金利を引き上げていくことは適切であり、おそらく数カ月以内にそれが行われるだろう」と述べた。賃金の伸びが遅いことはイエレン議長も気にしているが、その後発表された4月の米個人消費支出が強かったことから、FRBの利上げは6月か7月かで接戦模様になってきた。